「保護する責任」とは、誰の責任か?
国連を中心とする国際社会の責任です。危機に瀕している無垢な市民を見放さないという責任です。
でも、これが実行に移されるまでには時間を要しました。やはり、国連の原則である内政不干渉がネックとなっていたのです。
でも、内戦による犠牲者はどんどん増えてゆきます。ルワンダの隣のコンゴ民主共和国では、なんと20年間で540万人(東京都の半分です!)が犠牲になっていたのです。
そうして、ようやく、国連は一大決心をします。それが、1999年に国連事務総長の名で発布された告知です。これにより、PKO部隊は、任務遂行のためには、「紛争の当事者」になることを厭わなくなったのです。これは、それまで中立性を重んじていたPKOにとって、一つの革命です。
この告知によって、もし無垢の住民がPKOの目の前で攻撃を受けたら、PKOはその脅威に「紛争の当事者」として立ち向かうのです。
例えば、ふつうの国で、もし国民に脅威が降りかかった時、その脅威を排除する、つまり戦争するのは、その国の国軍です。それをPKOがやるのです。
その脅威が、PKOの受け入れを同意したその国の国軍であっても、です。
もはや、停戦の有無などは関係ありません。
現在、自衛隊が送られている南スーダン。南スーダンPKOがまさにこれなのです。
南スーダンは、スーダンの内戦から生まれた、世界で一番新しい国です。2011年のことです。
国際社会は、依然隣国のスーダンとの紛争を抱えるこの国の誕生を支援しようとしました。PKOも、新しい国の建国の支援という意味合いで派遣されることになりました。
ところが、しばらくすると、この国は内部から分裂してしまうのです。なんと、新しい内閣の大統領と副大統領が仲違いし、両派の間で2013年から激しい内戦状態になるのです。
2013年は、1999年のPKO変革の後ですから、南スーダンPKOは、即座に、筆頭任務を「住民の保護」(保護する責任)に切り替えました。ルワンダの時のように、撤退はしません。
昨年2015年にやっと、停戦合意が、締結されました。その合意を実行するために、ずっと国外にいた副大統領とその一派が首都ジュバに入り、これから新しい政府の体制をつくろうかという矢先、今年7月、両派の間で大規模な戦闘が起きてしまったのです。
多くの住民が犠牲になりました。でも、PKOは逃げません。中国軍のPKO兵士が2人殉職しました。
事態を重く見た国連安全保障理事会は、先月、PKO部隊4000名の増員を決定しました。
繰り返しますが、PKOは、もう、逃げないのです。住民を守るために。
さて、自衛隊です。
皆さんの中には、「駆けつけ警護」などの新しい任務を背負わせて、安倍政権がこれから自衛隊を派遣すると思っている方はいませんか?
それは違います。南スーダンに自衛隊を送ったのは、2011年、民主党政権です。