仰天!アルプス山中で「孤独と沈黙」に生涯を捧げる修道士の暮らし

「本当の豊かさ」とはなんだろう
杉崎 泰一郎 プロフィール

なおラ・グランド・シャルトルーズ修道院は男子修道院で、男性のみが居住している。ディスマ修道院長の話では、系列の女子修道院は現在世界各地に5、男子修道院は16が存在し、ラ・グランド・シャルトルーズ修道院はこれを束ねる、いわば総本山の役割もある。

1日の大半を「孤独」と「沈黙」の中で過ごす

現在ラ・グランド・シャルトルーズ修道院には15人の修道士と、修道士の暮らしを支えて働く助修士が12人住んでいる。彼らは修道院創立期に書かれた規則、『シャルトルーズ修道院慣習律』を守って生活している。

規則が定める大枠は、修道士たちは修道院長のもとで決められた時間割に従って同じ生活を営み、独身で、私有財産を持たず、許可なしに修道院から出ることなく、亡くなれば院内の墓地に葬られる、などである。

ラ・グランド・シャルトルーズ修道院の最大の特徴は、修道士ひとりひとりが個室を割り当てられ、平日は1日の大半を個室で孤独と沈黙のうちに過ごすということにある。

礼拝の様子。祈りや集会・散策以外の時間は全て個室で過ごす。

全員が聖堂に集まって典礼を行うのは1日3回で、修道士同士が自由に会話できるのは日曜祭日に開かれる集会や談話の時間のみである。

個室はすべてが回廊に面して建てられ、2階建てのいわゆるメゾネット形式となっている。2階は修道士が1日の大半を過ごす場所で、机、書架、祈禱台、寝台、流しなどが備えられている。

ここで修道士は聖堂に集合する時間以外、祈り、読書、食事などを沈黙のうちに行い、就寝する。1階は手仕事用の作業場で工具や薪の置場もあり、廊下に面したドアから回廊に出て、聖堂などほかの施設に行かれるようになっている。

清貧の理念を反映してか、室内に装飾は一切なく、食器そのほかの道具もみな質素で、食事は菜食を基本としている。なおディスマ修道院長の話では、現在修道院は建造物の所有権を一切有しておらず、使用権のみを保持しているとのこと。個人のみならず法人としても清貧を守っているということだ。

このような修道士の日常について、私は書物から考察していた時は、厳しい規則を耐え忍ぶ禁欲修行とのみ考えていた。しかし修道士が日々生活する姿やディスマ修道院長の話から、その考えは全く変わった。

個室の孤独は想像以上につらい

つまり修道士たちが沈黙、清貧、時間厳守などの規則に従っていることは確かだが、どのように守るかは各自に任されていることがわかったのである。

たとえば規則通りに修道士は菜食中心の食事を、定刻に個室で黙々と摂っている。ただ映像から伺うに、修道士たちは机で本を読みながら食事したり、個室の庭でピクニックをするように食事をしたりと、むしろそれぞれの方法でリラックスしている様子にも見えた。

また祈りながらストーブの温度を調節したり、祈りの合間に読書をしたり書き物をしたり、陽気のよいときは庭で黙想をしたりと、それぞれのペースで生活することが許されている。すなわち集団としての規律と目的を共有しながら、プライバシーと個性も絶妙なバランスで尊重されているのだ。

フランス・カトリック系のラ・クロワ紙のインタビューに答えるディスマ修道院長

それでもディスマ修道院長が語るには、修道院に入ったころは個室の孤独がつらく、断食、寒さ、徹夜の祈りより厳しいものだったという。

また共同生活であれば、だれかが見張っていてくれるが、個室ではそれがないのが難しく、とくに一人で夜中の祈りを行うために早く寝て、祈りのあと再び寝るのはたいへんだったと述べる。

ただ修道士を監督し、指導する役割にある修道院長は、個室に入って相談を聞いたりすることができると『シャルトルーズ修道院慣習律』に規定があり、現在でも祈りの集合時間に聖堂に来ない者があれば、個室に様子を見に行くことになっているという。つまりここでも個人と共同体の調和が図られているのである。

なお日曜祭日には、すべての典礼を聖堂で行い、食事を共同で摂る。そして修道院の広大な敷地を談笑しながら散策し、大きなテーブルを囲んで語りあうことが許されている。

真冬のシーンでは、修道士たちが靴に日本の「かんじき」のようなものをつけ、連れ添って修道院の裏山を登り、声をあげて雪のスロープを滑り降りるシーンがあった。仲間と一緒に心身を解放して、メタボ防止にも有効なレクリエーションといえる。