2016.09.24
# ミステリー小説

東野圭吾が海外で大ブーム! 日本ミステリー、つぎつぎ世界へ

英訳出版の現在
松川 良宏

欧州主要国での翻訳状況にも簡単に触れておく。

ドイツではガリレオシリーズの『容疑者χの献身』と『聖女の救済』、加賀恭一郎シリーズの『悪意』と『私が彼を殺した』(今年4月)が出版されており、ほかに『レイクサイド』も訳されている。

フランスでは、英訳もあるガリレオシリーズの長編3編と『白夜行』のほか、『むかし僕が死んだ家』と『天空の蜂』が出版されており、今年10月には『夢幻花』も出る予定である(『容疑者χの献身』は英訳のほうが早かったが、『聖女の救済』、『真夏の方程式』、『白夜行』は仏訳のほうが先に出ている)。

イタリアでは出版順に『白馬山荘殺人事件』、『秘密』、『レイクサイド』、『容疑者χの献身』、『聖女の救済』、『手紙』(今年4月)が刊行されている。

エドガー賞とは?

東野圭吾が世界中に一躍その名をとどろかせるきっかけとなったエドガー賞とはどのような賞なのだろうか。

エドガー賞はアメリカ探偵作家クラブ(Mystery Writers of America)が毎年授与している賞で、日本ではアメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)と呼ばれることも多い。

国内でいえば日本推理作家協会賞に相当するものといえそうだが、日本推理作家協会賞が同一作家の複数回の受賞ができない規定になっている一方、エドガー賞は複数回の受賞を許容しており、純粋に、前年の最優秀作に贈られる。その点では、日本における『このミス』第1位の要素も併せ持つ賞といえそうだ。

最優秀長編賞、最優秀新人賞(最優秀処女長編賞)、最優秀ペーパーバック&電子書籍賞、最優秀短編賞、最優秀ジュヴナイル賞などさまざまな部門賞があり、最優秀新人賞だけは対象をアメリカの作家の作品に限っているが、それ以外は翻訳作品にも門戸を開いている。

エドガー賞の数ある部門賞の中でも、最も注目を集めるのが最優秀長編賞である。各部門賞はそれぞれスタートした年が異なるが、最優秀長編賞は1954年から授与されており、60年あまりの歴史を持つ。世界中のミステリー読者・編集者が注視する賞であり、当然日本でも過去のすべての受賞作が翻訳されている(最新の2016年の受賞作を除く)。

モダンホラーの巨匠、スティーヴン・キングが執筆したミステリー長編『ミスター・メルセデス』がつい最近邦訳されて話題になっているが、これが2015年の受賞作である。さかのぼれば、レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』などもこの賞を受賞している。

日本の作品では『容疑者χの献身』のほか、2004年に桐野夏生の『OUT』もエドガー賞にノミネートされているが、どちらも最優秀長編賞へのノミネートであった。作品自体の魅力もさることながら、やはりこのエドガー賞ノミネートの効果も大きいのだろう。『容疑者χの献身』と『OUT』はどちらも20以上の言語に翻訳されており、この2作が世界において――少なくとも欧米において――日本のミステリー小説を代表する2大作品だと認識されていることは間違いないと思われる。

『容疑者χの献身』が翻訳出版されている言語(筆者調べ)
英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、カタルーニャ語(スペイン東部の言語)、ドイツ語、オランダ語、デンマーク語、ロシア語、チェコ語、リトアニア語、ギリシャ語、ハンガリー語、ヘブライ語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、ベンガル語

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