空白地帯に旗を立てよ!「100万人に1人」の人材になる3ステップ

正解なき時代を生き抜くために
瀧本 哲史, 藤原 和博

100×100×100で「100万人にひとりの人」になれ

藤原 でもさぁ、正直に言うとこれは大人たちにこそ、読んでほしい本だよね?

瀧本 そうですね。中学生に向けて書いていますけど、読んでいちばん役に立つのは40代や50代の、親御さん世代かもしれません。子どもたちになにを伝えればいいのか、ほんとうの「学び」とはなにか、これからの時代を生き抜く条件とはなにか、旧世代の大人ほどわかっていませんから。

藤原 むしろ大人たちのほうが迷っている時代だもの。

瀧本 ええ。これまでどおりではやっていけない、なにか変わらなきゃいけない、と思いながら、具体的にどう変わればいいのかわからない。子どもたちだけでなく、大人も一緒に学んでほしいし、一緒に議論できるような本にしたつもりです。

藤原 そこの問題意識は、ぼくがやっている「よのなか科」の授業とまったく同じですね。「よのなか科」では、各界で活躍している大人たちをゲストに招くことも多いけど、これは「ゲストの有名人が、特別な授業をする」わけじゃないんです。

メディアでは、よく誤解されるんだけどね。そうじゃなくて、ゲストの大人も一緒に学んでいく。たとえば「死刑は必要か、不必要か」といったヘヴィなテーマについて、大人も一緒に考えて、それぞれ自分なりの「納得解」を導き出していく。ゲストの大人たちは、先生というよりも「触媒」なんです。

瀧本 はい。『ミライの授業』で紹介した変革者たちも、先生やお手本というより、触媒に近いですね。実際に、成功者だけではなく、時代を見誤って失敗してしまった「偉人とされる人」たちもたくさん紹介していますし。

藤原 そうでしょ? だって、これからのよのなかには、正解なんかないんだから。

ぼくは山一証券が破綻した1997年に日本の成長社会はピークアウトして、1998年から成熟社会に突入したと規定しているんだけど、「正解が失われた成熟社会」をどう生き抜くか。これはいまの教育界に投げかけられた大きなテーマだし、大人自身にとっても死活問題といってもいいくらい大切なテーマなんだよね。

瀧本 おっしゃるとおりです。

藤原和博氏「まずは100人に1人の人材になろう」

藤原 だからね、ぼくはこの本のなかにある「空白地帯に旗を立てろ」という言葉が大好きなんです。瀧本さんがこれまでの著書で指摘し続けてきた「コモディティ化」の問題。つまり、みんなと同じことをやっていたのでは食っていけないよ、という話。

ぼくはこれ、ポケモンのカードにたとえて「レアカードになれ」という言い方をしています。要するに、希少性のある人材になれ、ってことですね。

瀧本 はい。「ポケモンGO」のヒットで、その比喩は大人たちにも伝わりやすくなったかもしれませんね。

藤原 じゃあ、どれくらいの希少性が必要かというと、おそらく「100万人の1人」の人材。それがオリンピックのメダリスト級の希少性です。でも、いまからぼくが体操をはじめたところで、内村航平選手にはかなわない。勝てるはずがない。そこで考えうる戦略が、「まずは100人に1人をめざす」こと。

瀧本さんがおっしゃるように、競合の少ない「空白地帯」を見つけて、そこに旗を立てる。マルコム・グラッドウェルが指摘した「1万時間の法則」(どんな人でもその分野に1万時間の労力を投下すればその道のプロになれる、とする法則)にならって、「100人に1人」をめざす。

瀧本 なるほど。いきなり「100万」の海には飛び込まない。

藤原 そう。それでたとえば犬のトリマーという分野で「100人に1人」になったら、別の分野で「100人に1人」になる。会計とか、お笑いとか、なんでもいいですよ。そうすると、かけ算が働く。100人×100人で「1万人に1人」の人材になれる。

あとは、もうひとつ「100人に1人」の分野を築けば、100人×100人×100人のかけ算で「100万人に1人」の超レアカードになる。会計ができて、営業ができる、犬のトリマー。それだけでもう、おもしろそうじゃない? これはまさに「空白地帯に旗を立てる」の延長にある話なんですよ。

瀧本 たしかに、本書で紹介したナイチンゲールという女性も、「看護学」と「統計学」、後には「衛生学」や「建築学」などを組み合わせることで世界を変えた人物でした。精巧な日本地図をつくり上げた伊能忠敬にも、「天文学」と「数学」というバックボーンがあった。

ノーベル生理学賞・医学賞をとった大村智さんも、あえて「動物用の医薬品」という空白地帯に活路を見出した。みんな、世間一般で思われている専門とは別のところで道を拓き、自分だけの旗を立てています。

藤原 うん。こういう大切なメッセージを、偉人伝スタイルで具体的な事例を挙げながら紹介してくれるのは、『ミライの授業』最大の魅力ですね。