イギリスの老人に学ぶ、お金に左右されない老後「7つの習慣」

第二の人生をどう謳歌するか
井形 慶子 プロフィール

④食:畑仕事で薬いらず、健康を維持する

年をとるうえで大事なことは、いつも興味の持てるものがあることと、健康を維持することです。

世界中が厳しい経済状況におかれる中、自分の食べるものを自分で作る市民農園の畑仕事は、新鮮で安全な野菜や果物をたくさん採ることができ、すがすがしい空気を吸いながら身体を動かせると、ジムに通う以上のメリットがあるそうです。

じゃがいもや豆、キャベツ、カリフラワー、ニンジン、ズッキーニ、レタスなど、さまざまな野菜を作れば、買う必要もなくなり、食費も節約できます。期待していた野菜ができない時も、同じ農地で農作物を作っている人たちと交換したり、お裾分けにもありつけます。

多くできすぎてしまったらジャムやチャツネ作りを。とても手のかかる作業なので、一日中キッチンにいることもありますが、これもまた現役にはできない贅沢。

晴れた日に夫と二人でお弁当を持って行ったり、農園で知り合った人たちとバーベキューをすることもあり、近所に市民農園があるかどうかは、終の住まい探しの大きなポイントです。 

⑤家族:成人した子どもとのつきあいを楽しむために

4人の子どもたちはそれぞれ独立し、めいめいの道を歩んでいます。娘2人と孫たち3人はロンドンで、一番下の息子は、イギリスからはるかに遠いニュージーランドで、ヨークシャー出身のパートナーと現在暮らしています。

彼女が今も親の役割として信じていることがあります。それは親というのは、子どもたちが独立し、一生懸命働く、そのことを楽しみに子を育てるということです。

むしろ離れているほうが、訪ねたり、迎える楽しみが生まれます。会いに行ったり、一緒に旅行したりという家族の幸せな計画は、バランス良く、途切れないようカレンダーにちりばめることが大切だそうです。

⑥イベント:元同僚との同窓会を計画する

会社勤めの人は人生で最も多くの時間を職場で過ごします。けれど、仕事を辞めると、「ちょっと一杯」もできなくなり、交流もなくなってしまいます。長年家族以上に時をともにした親しい同僚とは一年に1回同窓会を開き、のんびり楽しくつきあいましょう。

ケイティも夫の元同僚の家で開かれる“同窓会”に夫と小旅行気分で参加しています。この同窓会には、友人や家族もやってきて、家で手料理を食べながら過ごすのだとか。

最近では、二人の家から約60㎞離れた夫婦が主催したそうです。招かれる側は花、ワイン、チョコレートを持ち寄るのみ。まず、夕食の前に、皆で近くのラベンダー畑を散歩。

畑の中にあるカフェで暖炉を囲み、オレンジとラベンダーのケーキとコーヒーでブレイクします。この日の夕食はダービーシャーの郷土料理が振る舞われました。

そのメニューは、かぼちゃとコリアンダーのスープ、メインは、牛肉のステーキと、キドニー&マッシュルームパイ(羊などの内臓を煮込んだイギリスの伝統的なパイ料理)。小さな皮つきポテトと、カリフラワー、ブロッコリー、そしてニンジンと地元の冬野菜添え。デザートには、クリームが添えられたフルーツチーズケーキとコーヒーです。

何年かに一度の当番が回ってきたら、自慢の家庭料理でもてなす。この同窓会の良いところは、皆が今の生活や会社時代のことについて話すうち、リタイア後の人生がとても“素晴らしい”と共感し合えることだとか。

自分たちはこの幸せな時間を手にするため頑張ったのだと、閉鎖的になりがちな思考を客観的に見つめ直せる貴重なイベントでもあるそうです。退職金に等しい会社の価値ですね。

⑦学び:挫折しない外国語の学び方

日本ではリタイア後、時間ができたから英会話を勉強したいという中高年の方は多いのですが、なかなか長続きしないようです。

世界中で58の国が英語を公用語として使っているため、どこに出かけても言葉に困らないイギリス人も、他言語を習得するのは得意ではありません。けれど、外国語会話を学びたい人はあとを絶たず。

そこで、ケイティの住む町では、外国語を勉強するならその国の料理も楽しもう! と、皆で一人一皿手料理を持ち寄る「持ち寄りシェア」ランチが始まったそうです。

最初のランチはドイツをテーマにしたビュッフェ。ちゃんとしたドイツ料理の事前リサーチをしたのち、参加者30名が腕を振るいました。

ケイティは赤キャベツ、赤たまねぎ、セロリ、ニンジン、そしてナッツをこしょう入りのマヨネーズであえたコールスロー、そしてサワークリームのクッキーを持参。食事会は大成功。この日はドイツ語に熱中している人々が、ドイツに行った人の経験談を聞く良い機会にもなったとか。

四苦八苦しながらドイツ語を勉強する人より、料理をつまみつつ、みんなで下手なドイツ語を話すほうが、外国語は上達していくそうです。定年を迎えて最も素晴らしいのは、いつでも好きなことをしていいということ。

遠回りに見える料理から入る外国語習得もその一つです。

現役を退いた後、用意周到に備えなければ、老後の暮らしが破綻してしまうと感じる日本人ーー。お金の心配に潰されない、自分らしい老後のヒントがこの本からみつかる。
井形慶子(いがた・けいこ)
長崎県に生まれる。大学在学中から出版社でインテリア雑誌の編集に携わる。28歳で独立後、出版社を興し、イギリスの暮らしをテーマにした情報誌「ミスター・パートナー」を創刊、編集長に。30年以上の渡英経験から、イギリスについてのエッセイを執筆。著書には『イギリス式「おばあちゃんの知恵」で心地よく暮らす』(講談社)、『雑貨・服 イギリス買い付け旅日記』(筑摩書房)、『今すぐ会社をやめても困らないお金の管理術』(集英社ビジネス書)、『イギリス式 お金をかけず楽しく生きる』『イギリス式 月収20万円で愉しく暮らす』(ともに講談社+α文庫)など多数。日本外国特派員協会会員、ザ・ナショナル・トラストブランド顧問。
「ミスター・パートナー」公式ホームページ http://www.mrpartner.co.jp
井形慶子のブログ「よろず屋Everyman Everymanから」 http://keikoigata12.blog.fc2.com/