なぜイギリスの老人は「貯金140万円」で楽しく生きていけるのか

日本人は定年後を心配しすぎ!?
井形 慶子 プロフィール
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45歳以上預金額140万円未満が全体の40%

OECDの調べでは、国民一人当たりの働く期間は、イギリスは38.4年とEU平均を約3年も上回っています。年金だけでは生活が厳しいため、年金受給年齢になっても仕事を辞めないためです。

さまざまな統計やリサーチからあぶり出される数値は異なっているものの、ヨーロッパの人々がそうであるようにイギリス人もリタイア後の貯蓄による資産形成にさほど関心を示しません。

預金はほとんどゼロといわれ、45歳以上で預金額が9000ポンド(約140万円)未満の割合は2014年度末でも全体の40%強と、日本人とは比較にならないほど限られたお金しか持っていません。

これは老人ホームに入居する場合、生涯そこにいる前提で、住宅、貯蓄、年金などの資産を総括して、500万円以下なら全てその費用を国が負担することも関係しているようです。

このようなことからイギリス人はリタイアしたら、ライフスタイルを切り替え、出費を抑え、そこそこのお金で暮らす工夫をします。

たとえばペット保険に加入しておいて、人間より高いペットの手術代をカバーする。家屋修復保険で雨漏れなど住宅のトラブルに対応する。休暇も宿ではなく、子どもや友人の家に泊まり、カントリーサイドを歩き、一杯のお茶を楽しむのです。

稼いでいる時は消費する時。リタイアしてお金がなくなったらライフスタイルを変える。これが誰もが実践できるイギリス流中流老後なのです。

イギリス人のしたたかさに学ぶ

EU離脱決定後、経済が混乱する中、時の政府は早々に法人税を20%から15%以下に引き下げ、英国に進出している企業に離脱に伴うリスクを補う税制上の優遇処置を提案しました。変化に動じることなく、したたかに手を打つ。この対応の速さもまた、イギリス人の強みです。

自立して生きるイギリス人は、人生は長く生きることより質――クオリティ・オブ・ライフだといいます。急場をしのぐための貯金と、暮らしのスケール。贅沢はできないけれど、幸せが感じられる毎日。

それはどのようなものか。社会システムの違いは認めつつ、私たちの老後に向けた大きなヒント、誰もが手の届く幸せな老後のカタチがあるのではないかと思うのです。

現役を退いた後、用意周到に備えなければ、老後の暮らしが破綻してしまうと感じる日本人ーー。お金の心配に潰されない、自分らしい老後のヒントがこの本からみつかる。
井形慶子(いがた・けいこ)
長崎県に生まれる。大学在学中から出版社でインテリア雑誌の編集に携わる。28歳で独立後、出版社を興し、イギリスの暮らしをテーマにした情報誌「ミスター・パートナー」を創刊、編集長に。30年以上の渡英経験から、イギリスについてのエッセイを執筆。著書には『イギリス式「おばあちゃんの知恵」で心地よく暮らす』(講談社)、『雑貨・服 イギリス買い付け旅日記』(筑摩書房)、『今すぐ会社をやめても困らないお金の管理術』(集英社ビジネス書)、『イギリス式 お金をかけず楽しく生きる』『イギリス式 月収20万円で愉しく暮らす』(ともに講談社+α文庫)など多数。日本外国特派員協会会員、ザ・ナショナル・トラストブランド顧問。
「ミスター・パートナー」公式ホームページ http://www.mrpartner.co.jp
井形慶子のブログ「よろず屋Everyman Everymanから」http://keikoigata12.blog.fc2.com/