アメリカ「銃社会」の起源と現在 〜だから一筋縄では規制できない

どれほど悲劇を繰り返しても…
西山 隆行 プロフィール

NRA対ブルームバーグ?

近年、このような事態を打ち破る可能性のある動きが登場している。2002年から3期12年間ニューヨーク市長を務めた、マイケル・ブルームバーグの試みである。

2006年にブルームバーグは、ボストン市長のトマス・メニーノとともに大都市の市長を集めて、銃器の取り締まりが緩慢な州から都市部に違法銃器が流入するのを阻止するための会合を行った。

大都市の市長が集った背景には、銃に関する犯罪は主に都市で発生しており、都市住民が農村部の住民と比べて銃規制強化を主張する度合いが高いことがある。

ブルームバーグらが組織した、「違法銃器に反対する市長の会」は、銃規制強化を求めるロビー団体となり、現職・元職合わせて1000名以上の市長の参加を得た。

現状打破を狙うマイケル・ブルームバーグ(左)〔photo〕gettyimages

「違法銃器に反対する市長の会」は他の団体と統合して、2014年に「すべての街に銃規制を」となった。同会は12万5000人の会員を擁するNPO法人となり、広報活動に加えて、職場に銃を持ち込むことを容認する企業の商品をボイコットする運動を展開した。

その結果、コーヒーチェーンのスターバックス、メキシコ料理チェーンのチポトレ、ディスカウントストアチェーンのターゲットなどが、銃器の持ち込みを禁止した。

ブルームバーグは、フォーブス誌による2013年世界長者番付では13位にランクされており、270億ドルの資産を持つ。彼は2012年に、銃規制強化を主張する政治家を支援するための選挙広告に1000万ドルを提供すると宣言した。また、2014年の中間選挙に個人資産から5000万ドルを投じており、以後も経済的な協力を続けるとしている。

このように、銃規制推進派がNRAを経済的に上回る事態が発生している。この運動はブルームバーグの個人資産に依存し過ぎているが、この費用を用いて草の根団体の組織化を進めれば、銃規制推進派の影響力が増大していく可能性もあるだろう。

2016年の大統領選挙に際し、共和党の全国党大会で治安問題が中心的論点の一つに掲げられた。ドナルド・トランプはNRAと密接な関係を築くことを繰り返し強調している。他方、ヒラリー・クリントンは、ブルームバーグとともに銃規制強化に積極的に取り組んできた人物である。

今回の大統領選挙は、銃規制をめぐる政治についての転機になる可能性を秘めているといえるだろう。

西山隆行(にしやま・たかゆき)
成蹊大学法学部教授。1975年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て、現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『移民大国アメリカ』(筑摩書房、2016年)、『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会、2008年)、『アメリカ政治――制度・文化・歴史』(三修社、2014年)、『アメリカ現代政治の構図』(共著、東京大学出版会、2009年)、『マイノリティが変えるアメリカ政治』(共編著、NTT出版、2012年)など。

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