アメリカ「銃社会」の起源と現在 〜だから一筋縄では規制できない

どれほど悲劇を繰り返しても…
西山 隆行 プロフィール

平等と自警のための銃

大規模な銃乱射事件が起こるたびに銃規制を求める声は高まる。

にもかかわらず、徹底した銃規制を行うのが困難なのは、憲法の規定に加えて、銃に平等化装置としてのイメージを持っている人がいるためでもある。

銃を持たない状態では肉体的に優れた者が劣る者を暴力で支配することが多くなる。だが、銃を持てば、体力で劣る者が体力に勝る者に対抗することが可能となる。このような主張は、一部のフェミニストの間でも根強い。

また、広大な領土を有するアメリカでは、人口密度の低い地域で自らの身体や財産に危害が及びそうになった場合に警察を呼んでも到着までに相当な時間を要するため、自警する必要がある。そのためには銃は不可欠である。

このように、アメリカでは銃所持が支持されやすい条件が存在するのである。

〔photo〕gettyimages

「人を殺すのは人であって銃ではない」

活発な銃規制反対派の活動も銃規制を困難にしている。

全米ライフル協会(NRA)は、1871年に南北戦争の北軍の帰還兵らによって組織された、個人の銃所有の権利を擁護する団体であり、「人を殺すのは人であって銃ではない」というスローガンを掲げている。

1970年代以降は膨大な会員数(2011年当時公称450万人)と資金力(予算2億3000万ドル)を背景に活動し、全米最強のロビー集団の一つと評されている。

NRAが大きな影響力を行使できる背景には、その政策上の立場が強硬ながらも現実主義的だということがある。NRAは一切妥協を認めない強硬派だと紹介されることがあるが、正確ではない。

NRAは銃規制強化に反対するものの、重罪判決を受けた者への銃所持規制を認めるなど、既存法規は遵守している。全ての銃規制を拒否する米国銃所有者協会やリバタリアンは、原理主義的な観点からNRAの現実主義路線を強く批判している。

NRAは、熱心な活動家の支持を獲得できるほどには強硬ではあるものの、既存法規順守を主張する現実路線をとっているため、現職政治家と協力関係を維持することができるのである。

また、NRAは、特定の政党と強固な関係を形成していないが故に、大きな影響力を行使することができる。アメリカのメディアでも、NRAは共和党の強固な支持団体だと説明されることがある。たしかに、NRAからの献金については、共和党候補に対する額の方が多い。

しかし、2008年、2010年にはそれぞれ総額の22%、29%が民主党候補に献金されている。また、NRAが共和党候補に不利な行動をとった例も散見される。1992年の大統領選挙でNRAは、その生涯会員であった当時現職のジョージ・H・W・ブッシュを支持せず、献金も行わなかった。

実際のNRAの戦略は、現職候補がNRAの方針を全面的に支持している場合には党派に関わらずその候補を支持する、しかし、現職候補がNRAの立場に反する行動をとった場合には懲罰としてその候補を支持しない──という明確なものである。

NRAが共和党と関わりが深いのは、民主党が銃所持率が低く銃犯罪の多い都市部を地盤としているのに対し、共和党が銃所持率が高く銃犯罪の少ない農村部を地盤としていることの結果である。

この戦略は、銃規制推進派の有権者を多く抱えている候補の行動を変えることはできないだろう。しかし、銃規制推進派が少ない選挙区を基盤にする場合は、候補自身が銃規制にあまり関心を持っていないならば、NRAの立場に沿った行動をとることが合理的な戦略となる。

一般的な想定とは異なり、NRAは特定の政党と密接な関係を持たず、政党に関係なく候補に対する支持・不支持を決定するが故に、現職候補に対する脅迫能力を持っている。これが、NRAの強さの源泉の一つとなっているのである。

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