「貧困女子高生」バッシングの無知と恥〜「ニッポンの貧困」の真実

自分の価値観を振り回すな!
大西 連 プロフィール

絶対的貧困と相対的貧困

一口に「貧困」と言っても、どこからどこまでが「貧困」なのか、非常にわかりづらい。

たとえば、先述の「千円のランチ」に関しても、じゃあ500円なら貧困なのか、それとも300円以下じゃないと貧困と認められないのか、など明確な基準がなくあいまいだ。ともすると、個々人の価値観に左右されてしまう。

そうならないために、たとえば、政策的に(社会的に)貧困の解決を目指すための指標(定義)として、「絶対的貧困」と「相対的貧困」という考え方がある。

「絶対的貧困」は、2014年の国連人間開発報告書によれば、「1日1.25アメリカドル以下の生活をしている人」と定義されている。主にアジアやアフリカなどの途上国に多いのだが、十分な食料を確保できなかったり、不衛生な環境で住まざるをえなかったり、適切な医療機関にかかれないなど極度の貧困状態にある人が約9億人いる、とされている。

しかし、近年は途上国の開発も進み、絶対的貧困のラインである1日1.25アメリカドル以下という基準も1日1.9アメリカドル以下に引き上げられることが決まっており、地球規模でこの「絶対的貧困」は解決に向かいつつある。

日本では、ホームレスなど一部の人をのぞき、こういった絶対的貧困状態にある人はほとんど存在していないと言ってよい。むしろ、日本でいうところの「貧困」は「相対的貧困」である。

「相対的貧困」は、「1日1.25アメリカドル以下」のような世界共通の基準があるわけではなく、その国(地域)において一定程度以下の所得水準の人の割合を算出する考え方である。

相対的貧困率の実際の算定方法は、①収入から税金や社会保険料を引いた使えるお金(「可処分所得」という)がいくらか算出し、②それを一緒に生活している世帯人員で合算し、③その世帯人員の平方根で割って「等価可処分所得」を算出し、④その等価可処分所得ごとにならべたときの真ん中の人の値(中央値)を計算し、⑤その金額の半分以下の人の割合を出す、というものである。

あくまで、相対的な基準であるがゆえに、景気が良くなれば(多くの人が豊かになれば)貧困ライン(基準金額)は上昇し、景気が悪くなれば(生活が苦しい人が増えれば)貧困ラインが下がる。

なので、いわゆる飢えてしまう、住むところがない、着るものがなくて凍死してしまう、などのすぐさま生命の危険がある「貧困」だけではない「貧困」が、日本で言うところの「貧困」であり、多くの先進諸国ではこの「相対的貧困」を指標にしている。