“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」

日本を「幸せに導く」方法とは
週刊現代 プロフィール

「半端もん」を成長させる

開き直った私は、松風でセラミックの研究に打ち込みました。今にも潰れそうな会社ですから、生きていくために必死です。すると不思議なことに、どんどん成果が出て、画期的なファインセラミックスの製品をいくつも開発することができました。それがきっかけで京セラを興し、私の経営者人生が始まりました。

今考えれば、私の人生の中で松風工業に入社したのは、最高に幸せなことでした。ひょっとしたら神様があの会社に入れてくれたのかもしれません。

規模に関わりなく多くの企業が後継者難に陥り、人材育成の難しさが指摘されています。

稲盛 私はこれまで「半端もん戦法」で戦ってきました。京セラが多角化を始め、海外進出を本格化した時、私は考えました。新規事業は戦に例えれば敵地に乗り込むわけだから、優秀な武将を連れて行くのが常道です。しかし敵地を攻めている間に自分の城を取られてしまったのでは元も子もありません。

そこで私は最も信頼出来る部下に城を任せ、社内で所を得ていない「半端もん」、つまりは愚人を引き連れて敵地に乗り込むことにしたのです。何しろ半端もんばかりですから、最初は大変です。しかし、激しい戦いで辛酸をなめ、私の戦いぶりを見ているうちに、半端もんたちがひとかどの武将に育ちます。新しい領土は取れるし、人は育つしで一石二鳥です。

世の中では外部から連れてきた「プロ経営者」をもてはやす風潮もありますが、企業は人間の集団です。戦時中の軍歌の文句ではありませんが、「泥水すすり、草を噛んだ」仲でなければ社員はトップを信頼しません。トップにはそういう追い込まれた状態で、なお兵を励ましながら戦う強さが求められるのです。

「週刊現代」2016年8月20日・27日合併号より