“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」

日本を「幸せに導く」方法とは
週刊現代 プロフィール

稲盛経営でフィロソフィーと両輪をなすのが小集団をベースにした管理会計の「アメーバ経営」です。

稲盛 アメーバ経営は私が京セラを経営する中で編み出していったものです。先ほど開発からマーケティングまで自分でやっていたと言いましたが、その頃、切実に思ったのは孫悟空が毛を抜いて分身を作るように、私と同じように考え、判断してくれる社員がいてくれたらどんなに楽か、ということでした。

そこで会社を小集団(アメーバ)に分け、そのリーダーに判断を委ねるようにしました。各アメーバで毎月、時間当たり採算(売上高から経費を引いた金額を労働時間で割った数字)を算出し、目標達成を目指すのです。

リーダーは売り上げを最大、経費を最小にし、労働時間を減らすことを考えます。各アメーバの時間当たり採算は全社に公表されます。

つまりアメーバ経営とは一種の成果主義です。一般に言われている成果主義と違うのは、成果が報酬と連動しないところです。業績を上げた人々は社内で賞賛されますが、処遇は変わりません。業績が上がれば全社員の給料が上がるのです。業績と報酬を連動させた成果主義では、社員は欲望と二人連れで仕事をしてしまう。これではうまくいきません。

自分の報酬に反映されないにもかかわらず頑張れるのは「組織に貢献しよう」という気持ちがあるからです。「全従業員の物心両面の幸福の追求」こそが経営の目的なのです。

東芝や東京電力、シャープを見ると、これまで安全だと思われてきた大企業でも、いつ何が起きるかわからない。サラリーマンは不安な時代をどう生きればいいのでしょうか。

稲盛 不安や不平不満はあるでしょうが、何があっても一生懸命に仕事をすることです。一生懸命に仕事をすれば人間的に成長し、必ず人生のプラスになる。読書や哲学から学ぶこともできますが、人間性を高めるという意味では、仕事で努力をするのが一番です。まずは自分の置かれた場所で懸命に働いてください。

私は望んだ大学に進むことができず、大手の企業に入ることもできませんでした。鹿児島大学を出て入社したのは、京都にある松風工業という碍子を作る会社でした。入社するまで知らなかったのですが、この会社は今にも潰れそうな状態で、給料の遅滞もしばしば。近所の八百屋のおばさんにまで「かわいそうにねえ」と同情されました。

そんな会社ですから、いつも同期と「早く辞めてしまおう」と話していました。実際、ある時には京都大学の工学部を出た同期と、陸上自衛隊の幹部試験を受けに行きました。彼は松風を辞めて陸自に行きましたが、私は、私を大学に行かせてくれた兄が「せっかく入れてもらった会社を1年やそこらで辞めるのはけしからん」と反対したので松風に残ることになりました。