もはや外国人の「ブラック労働」なしでは成り立たない新聞配達の過酷な現場

「奨学金留学制度」の功罪
出井 康博 プロフィール

安倍晋三首相は、移民の受け入れを繰り返し否定している。だが、裏では着々と準備が進められてもいる。人手不足に直面する経済界の声、さらには米国などからの「外圧」に押されてのことだ。

2016年3月に開かれた自民党「労働力確保に関する特命委員会」の初会合では、テレビのコメンテーターとしても有名な米国人エコノミストからこんな提言があった。

「日本の大学で、日本語で授業を受けて卒業した留学生に対し、自動的に日本の永住権を与えるべきだ」

エコノミストは「移民」に対して日本人のアレルギーが強いことをわかって、「永住権」という言葉で置き換えている。だが、永住権の付与は移民の受け入れと同じことだ。

「大卒の留学生」に限って受け入れると聞けば、もっともらしく響く。もちろん、このエコノミストも「留学生30万人計画」で急増する“偽装留学生”の実態は知っているはずだ。金さえ払えば、彼らに卒業証書を出す大学はいくらでもある。そんな大学を卒業したところで、日本語は不自由で、単純労働者としてしか使えない。つまり、出稼ぎ目的の〝偽装留学生〟を移民にまでしてしまう抜け道を提案しているのだ。

人手不足は、低賃金・重労働を嫌がって日本人が寄りつかない仕事ほどひどい。そのことを素直に認めたうえで、なぜもっと正直な議論をしないのか。いつまで外国人を騙し、都合よく利用するつもりなのか。これでは日本が国ぐるみで「ブラック企業」をやっているも同然だ。

私は移民の受け入れをいっさい拒むべきだといっているわけではない。ただし「移民は一日にしてならず」である。今やるべきことは、将来「移民」となる可能性を秘めた外国人労働者、留学生の受け入れ政策について、一から見直すことだ。現状の制度は、嘘と建て前のオンパレードなのである。

単純労働者受け入れの裏口である「外国人技能実習制度」では、依然として「国際貢献」や「技能移転」といったお為ごかしがまかり通っている。「日本人と同等以上」と定められた実習生の賃金は、官民のピンハネのせいでまったく守られていない。ピンハネ構造を改め、実習生の再入国を認めるだけで「失踪」の問題は大幅に減り、現場にも役立つ制度になるはずだ。

経済連携協定(EPA)を通じての外国人介護士・看護師の受け入れにも、改善の余地は大きい。せっかく優秀な人材を集め、多額の税金まで遣って育成しながら、日本は「国家試験」というハードルを課して追い返してきた。受け入れの目的すら定義せず、意味不明な政策を取り続けてきた結果である。

「留学生30万人計画」は即刻中止すべきだ。出稼ぎ目的の留学生が歓迎される国など、世界を見回しても日本だけである。

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