偏差値78のAV男優が見つけた答え「セックスとは孤独の克服である」

森林原人×二村ヒトシ【第3回】

純粋で素敵な性欲

森林: 「セックスを考えすぎるようになってしまったな」「それでいいのかな」と悩んだ時期に、男優の花岡じったさんのイベントがあったんです。そのとき話題に出たのが、バクシーシ山下さんが監督した『女犯』の問題です。

二村: 日本AV史に興味がない人たちのために解説をしておくと、90年代に『女犯』というバクシーシ山下監督の作品が、レイプをあまりにもリアルに描きすぎているということで、フェミニストのみなさんから激しい抗議を受けました。

森林: 作り物だとはいえ、ここまで暴力的に女性を扱うのは許せない。というより、これは「作り物」ではないのではないか――ということでフェミニストの人たちが怒って、バクシーシさんと話し合いの場が持たれることになった。

二村: 大変な状況だよね。今で言う「大炎上」です。

森林: ところが、その話を聞いたじったさんは「うらやましい」と思ったそうです。「たくさん女が来る場に出ていけるのはうらやましい」と。「しかもその女の人たちは俺が出ている作品を見ているんだよね?」と。フェミニストに怒られに行くのに、自分のセックスを見ている女性たちと会えるのはうらやましいと、じったさんはムラムラしている(笑)。

それくらい純粋な性欲は素敵としか言いようがありませんよね。そう思ったら、フッと肩から力が抜けて、いつの間にか分析癖が消えていました。

二村: そういう意味では、森林君は自分のやるべきことに一年間かけて到達したのでしょうね。やるべきことをやったときは、いいものが出来ます。

今回の本には分析も入っているけれど、全体としてはすごく具体的です。「代々木忠という凄い監督がいてね」「佐川銀二という素敵な男優がいてね」ということを、AVを知らない人たちにもしっかり伝えられる筆力が森林君にはある。『セックス幸福論』はAVが好きな人なら間違いなく楽しめる本ですが、AVを見ない人たち、AVの味方ではない人たちにもぜひ読んでほしいな。

森林: そう言っていただいて本当にありがたいです。ただ……僕たち、今日は「セックス」とか「チンコ」とか相当に連呼しましたよね。

二村: まあ、軽く100回は言ったよね。

森林: 現代ビジネスさんは真面目な媒体ですから、この対談そのものがボツになるんじゃないかと、ちょっと今、不安です(笑)。

〈了〉

森林原人 (もりばやし・げんじん)
1979年、横浜生まれ。中学受験で麻布、栄光、筑駒、ラ・サール全てに合格し、筑駒に入学。そこで本物の天才たちを目の当たりにして人生初の挫折を経験。勉学に向けられていた努力は、性的なことに対する情熱に変わる。お小遣いやお年玉は全てエロ本に消え、付いたあだ名は“歩く有害図書”。東大受験に失敗、一浪した後、専修大学文学部心理学科に進学するも、大学生活に馴染めず自暴自棄になり、性的衝動の勢いも借りてAV男優のアルバイトに応募。初めての現場で滞りなく仕事をこなし絶賛される。20歳から37歳に至る現在までAV男優一筋。出演作1万本。経験人数8000人。趣味は読書で、好きな作家は池田晶子。
二村ヒトシ (にむら・ひとし)
1964年、六本木生まれ。慶應義塾大学文学部中退。アダルトビデオ監督。女性側の欲望・男性の性感・同性愛や異性装をテーマに「痴女」「レズ」「男の娘」などのジャンルで革新的な作品を発売。2つのAVレーベルを主宰するほか、ソフト・オン・デマンドの若手監督エロ教育顧問も務める。著書に『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)、共著に『オトコのカラダはキモチいい』(KADOKAWA)、対談集『淑女のはらわた』(洋泉社)。湯山玲子さんとの対談本『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』(幻冬舎)。最新刊は川崎貴子さんとの対談本『モテと非モテの境界線 AV監督と女社長の恋愛相談』(講談社)。