偏差値78のAV男優が見つけた答え「セックスとは孤独の克服である」

森林原人×二村ヒトシ【第3回】

二村: ただ、どんな作品であれ現状のAVは、そのまま性教育の教科書にはならないでしょうね。代々木さんの作品のように現実への橋が架かっているものもありますが、「現実とは違う」というフィルターを持って見ないといけない。

森林: 基本的には娯楽です。

二村: 僕が作った痴女シリーズでは、男女が逆転すれば心が通い合うのだと、ありえない虚構をわざと組みました。この15年で風俗嬢ではない女性が男性の乳首を舐める行為が、一般の人の普通のセックスの前戯に組み込まれるようになった性意識の変化に、僕のAVは一役買えたのではないかと自負しています。

ただ、痴女シリーズをそっくりそのまま真似してもらっちゃ困る(笑)。女性が積極的にセックスをする、という部分だけなら、おおいに真似してもらっていいけれど。

「先週、クラミジアになりました」という自己紹介

森林: 西本願寺のお坊さんに聞いた話では、学校の先生は「おしべ」「めしべ」の話に代表されるような話しかできないそうです。だから、仕事でセックスをしている者の声を届けることには意味があると思います。セックスの暴力性や性感染症のリスク、妊娠の可能性といった問題も僕らが言うことで伝わるかもしれません。

二村: でもそれはAVの中では語れませんよね。

森林: はい。ただ、AV業界で働いている人たちが言うからこそ、説得力がある部分もあると思うんです。以前、エイズ文化フォーラムに呼ばれて、男優仲間の田淵正浩さん、吉村卓さんたちと出かけていったことがあるんです。

そのとき田淵さんは自己紹介で、「AV男優の田淵です。つい一週間前にクラミジアになりました」と言ったんです。初対面の相手にいきなり「クラミジアです」と申告する人なんて、どこにもいませんよね(笑)。それを言えるのはAV業界人の強みです。

二村: われわれは体を張って仕事をしていて、仕事でクラミジアになりました。だから恥ずかしくないので言いますが、蔓延しています。みなさんは恥ずかしいから自己申告できないでしょうが、気をつけましょう。クラミジアになるリスクは誰にもあります――とアナウンスすることが、われわれはできる。

森林: 作品の中では無理でも、作品の外でなら、そういう声を届けられます。

二村: そうだね。それはやるべきですね。

性の啓蒙ということで言えば、江戸時代の「春画」があります。春画は公の教育ではありませんでした。ポルノです。でも、お母さんがこっそり娘の嫁入り道具にしのびこませた。

これはどういうことか。僕の解釈では「そのときは乱れていい」と教えている。オンとオフにわけて、普段は貞淑であれ、でも乱れていいときに好きな男の前で乱れるのは悪いことではないんだ、というダブルスタンダードというか、一つの作法を教えている。