急増する「ブラックバイト問題」〜学生の未来を奪うほどの驚くべき実態

長時間労働、賃金未払い、セクハラ…
大内 裕和 プロフィール

"抜けられない状況"をつくる

第二に、正規雇用労働者の減少と非正規雇用労働者の急増による非正規雇用労働の基幹労働化である。

非正規雇用労働者の数は1990年の881万人から、2014年には1963万人と2倍以上に増加した。これに対して正規雇用労働者の数は減少しており、全体の労働者数に占める非正規雇用労働者の割合は、1990年の20.2%から2014年には37.4%へと2倍近く上昇した(総務局統計局「労働力調査」)。

非正規雇用労働者数の急増と正規雇用労働者の減少は、職場における非正規雇用労働者の位置を変えた。非正規雇用は従来、正規雇用の補助労働の役割を果たしていた。しかし、非正規雇用の急増と正規雇用の減少は、これまで正規雇用が行っていた責任の重い基幹労働を、非正規雇用が担わざるを得ない状況を生み出している。

非正規雇用の活用によって人件費を削減したい企業が、親の貧困化によって働くことを余儀なくされている学生アルバイトに目をつけた。塾、コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、飲食店、居酒屋などのサービス産業が、学生アルバイトに、職場の基幹労働を担わせる雇用戦略を採用したのである。

従来の学生アルバイトの多くが、職場を休んだり、辞めたりすることが容易で、シフトの調整などでも学校生活との両立が比較的簡単であったのは、その多くが職場の補助労働を担っていたからであった。しかし、責任の重い基幹労働を担うようになってからは、休めず、辞められず、学生生活との両立はとても困難となった。

特にここで強くなっているのは、「職場への組み込み」である。様々な手法を使って高校生と大学生の「職場への組み込み」が強化されている。

職場の人間関係のあり方は、学校の部活動をモデルにしているところも多い。先輩後輩や同級生同士の関係などである。高校生と大学生の多くは部活動の経験があるから、それと類似する人間関係を職場で構築することによって、帰属意識を持たせ、容易には抜けられない状況をつくり出している。

売り上げのノルマをアルバイトに課したり、店の売り上げ目標へ向けて働かせたりするのは、利益追求主義であると同時に、学生アルバイトを職場により強く組み込む手段となっている。

会社の利益と自分の喜びを同一化させ、「やりがい」意識を持たせることによって、より職場へのコミットメントが強められる。これによって高校生や大学生はブラックバイトを自然なものとして受け入れていってしまう。