急増する「ブラックバイト問題」〜学生の未来を奪うほどの驚くべき実態

長時間労働、賃金未払い、セクハラ…
大内 裕和 プロフィール

ブラックバイトを次のように定義した。

「学生であることを尊重しないアルバイト。フリーターの増加や非正規雇用労働の基幹化が進むなかで登場した。低賃金であるにもかかわらず、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課されたり、学生生活に支障をきたしたりするほどの重労働を強いられることが多い」

私も参加したブラック企業対策プロジェクトの「学生アルバイト全国調査」(2014年)によれば、希望していないシフトに入れられたことがある大学生が21.3%であることをはじめ、残業代不払いやパワハラなど何らかの不当な扱いを受けている割合が66.9%に達している。このことは、ブラックバイトが大学生の間で広く浸透していることを示している。

急速に悪化する「親の貧困

ブラックバイトの登場には主に2つの社会的背景がある。

第一に、学費の高騰と親の貧困化が挙げられる。1960年代後半には、年間わずか1万2000円であった国立大学の授業料は、2015年度の標準額で53万5800円、初年度納付金は81万7800円にも達している。私立大学となれば授業料の平均は86万72円であり、初年度納付金は131万2526円とさらに高くなる(文部科学省調査、2015年)。

1970年代~90年代にかけて大学授業料が年々引き上げられたにもかかわらず、そのことが大きな社会問題とならなかったのは、終身雇用と年功序列型賃金を特徴とする日本型雇用が健在で、親の収入が上がり続けたからである。

しかし、1990年代後半をピークに労働者の賃金や世帯年収は下がり続けており、「子どもが大学生になる頃に親の賃金が上がる」という構造は、すでに大きく崩れている。

大学生の学費の主たる担い手である保護者の経済状況は、急速に悪化している。たとえば、民間企業労働者の平均年収は、1997年度の467万円から2014年の415万円に低下している(国税庁「民間給与実態統計調査」)。また、1世帯あたりの平均所得金額は、1994年の664万円をピークとして2014年には542万円にまで低下した(厚生労働省「国民生活基礎調査」)。

保護者の所得減にともなって、大学生の仕送り額も減っている。1995年には月に10万円以上の仕送り額の下宿生が全体の62.4%を占めていたのが、2014年には29.3%まで低下している。

一方で仕送り額が月に5万円未満が1995年の7.3%から2014年には23.9%に上昇し、仕送り額ゼロも1995年の2.0%から2014年には8.8%まで上昇している(全国大学生活協同組合連合会「学生生活実態調査」)。

この状況下で、大学生のアルバイトはかつての「自分で自由に使う」お金を稼ぐためのものから、「それがなければ学生生活が続けられない」お金を稼ぐものへと変わった。保護者の経済状況が悪化していることは、高校生のアルバイトにも拍車をかけている。

高校生や大学生の経済状況が厳しいことを、雇う側は敏感に察知している。学生の多くはバイトをしなければ学校生活を続けられないため、かなり無理な労働条件であっても我慢して働かざるを得ない。厳しいことを要求しても簡単には辞められない経済状況を知りながら、雇用主はこれまで以上にきつい労働条件で学生を働かせている。それがブラックバイトを増加させる要因になっている。