2016.08.15

故郷への帰還を待ち続ける日本兵の遺骨を、私たちはどうすべきか

いまも野ざらし雨ざらし
大塚 智彦 プロフィール
ビアク島で見つかった遺骨

遺骨収集事業の問題点

約50万人の日本兵、日本人が死亡し、未だに約37万人の遺骨が未収集のフィリピンでは現地の住民に遺骨収集の見返りとして報酬を払っていた疑惑が浮上した。

報酬目当てに墓地を暴いてフィリピン人の遺骨を持ち出したり、日本人の骨と称して動物の骨を持ち込むケースまでもが頻発、現地で強い反発を招いた結果、現在フィリピンでの遺骨収集事業は実質上ストップしている。

また西部ニューギニア、インドネシアのパプア州での遺骨収集事業でも、現地協力者に謝礼を支払って遺骨の発見、収集、保管を依頼しているため、「詳細な遺骨発見の場所、周辺での遺品(認識票、飯盒、印鑑など)を手掛かりとする身元特定や部隊特定につながる情報」が軽視されるという問題点が指摘されている。

このため民間団体の日本人が現地に赴いた時には、施錠された小屋や雨水を溜める容器などに無造作に遺骨が入れられているだけ、よくても袋詰めの遺骨に発見された村や地域の地名が書かれているだけ、という状況がある。

前述のように現在の科学では「歯」が身元特定の有力な手掛かりとなる可能性があるのだが、こうした方式では歯があっても周辺に何があり、正確にどこにあったかの記録がきちんと整理されていない場合は、所属部隊や身元の特定が困難を極める。

こうした情報収集では「日本兵と思われる遺骨」の数だけを実績として日本に送還させるという「質より数」の遺骨収集事業になる傾向があり、特定の団体による厚労省との「癒着構造」という問題点を指摘する声は大きいが「典型的なお役所仕事」に徹する厚労省は聞く耳を持たない状態が続いていた。

こうしたなか安倍首相や自民党などの肝いりで、2015年、超党派の議員立法により「戦没者遺骨収集推進法案」が提案され、紆余曲折を経て今年3月24日に成立した。これにより、今後2024年まで集中して遺骨収集を実施することになった。

しかしその事業を実施する新たな組織にはこれまで諸々の問題を起こしたり、遺骨収集と無縁な民間団体、NPOなどが「長年の実績と情報の蓄積」や「遺骨収集に伴う手榴弾や実弾などの危険性排除」などを理由に参加しようとしており、新組織が立ち上がってもこれまでの遺骨収集と変わらない「数の実績」「身元特定無視」「日本人以外の人々への配慮なし」といった事態に陥る可能性は拭い去れない。

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