PC、ネットに続く第3のIT革命「ブロックチェーン」とは何か

数ある「フィンテック」の中でも別格
池田 純一 プロフィール

既存のビジネスを叩き潰す

振り返れば、フィンテックといわれる技術/サービスの多くは、2008年のリーマン・ショック後に生まれた。当初は、リーマン・ショックによって銀行がまともに機能しなくなったことで困窮した人たちに向けたサービスとして始まった。

学費のローンが返せず中退を迫られていた学生に、ウェブを介してお金を貸してくれる相手を探してくれるマッチメーカーとしてスタートしたLending Club。

アイデアはあるが起業するための資金がない人、起業はしているがプロジェクトを進めるだけの予算がない人に、広くファンドレイジングを可能にさせたKickstarter。

フードトラックのような移動店舗の人間でも安心して電子決済ができる仕組みを与えたSquare。

いずれもフィンテックの代表例として挙げられるスタートアップだが、その出発点はリーマン・ショックで困った人びとに救いの手を差し伸べたところから始まった。そして、苦境に立たされた人たちが、ある日突然増大したために立ち上げに成功してしまったサービスだ。

その意味では、銀行だけでなくFRBや格付け会社などを含む金融システムに従事する人々に対する深い不信から始まったものである(その成果を今になって金融業界自身が取り入れようとするのだから彼らの業は深い)。

こうしたいわばグラスルーツの動きから始まった初期フィンテックに対して、アンドリーセンがWWLたるビットコイン/ブロックチェーンに期待するのは、エンジニア出身の彼らしく、純粋に技術的ポテンシャルと破壊的イノベーション力にあるように思える。

WWWが多くの産業に対して行ってきたように、既存の金融産業のプレイヤーを狙い撃ちし、彼らのビジネスモデルを叩き潰すことで、いわば世直しを行おうとするようなものである。

このあたりの破壊性に対する一種確信犯的態度は、アンドリーセン以後の起業家の続出を経た後のシリコンバレーに特有のもののようで、たとえば最近翻訳が出た、ケヴィン・ケリーの新刊“The Inevitable(邦題『〈インターネット〉の次に来るもの』)”では、ブロックチェーンについては数ページしか触れられていない。

この本は、邦題にあるように「インターネットの次に来るもの」を扱っているのだが、先ほどのアンドリーセンの視点からすれば、その筆頭はブロックチェーンすなわちWWLのはずだ。だがケリーの目にはWWLはいくつもある次世代技術の一つとしか映らない。

だとすればそろそろケリーの視点から卒業すべき時なのかもしれない。確かにケリーの新刊は、ハイテク分野の編集者としての彼の人生の集大成ではあるのだが、同時にそれはベビーブーマー世代の一種のノスタルジアのようにも思えるからだ。