VR=ヴァーチャル・リアリティ。古くからあるこの技術が、いま大注目を集めている。いったいなぜか? VRは私たちをどこへ連れて行くのか?
期間限定でお台場で開催されていた「VR ZONE」でVRを体験し、大いに取り乱した作家・海猫沢めろんさんが、開発者である(株)バンダイナムコエンターテインメントのコヤ所長に、「VRの核心」を聞いた。【第2回】(→第1回はこちら)

ドームスクリーンとVRの違い
——VRがなぜ急にビジネスとして出てきたのか、ポイントが二つあると思うんです。一つは視野の広さ。もう一つは先ほどおっしゃっていた描画速度の問題。これはソニーの方が言っていたんですけど、景色の書き換えなんかは0.02秒以上でやらないと、偽物に見えてしまうそうなんです。
コヤ そうですね。
——最初に実用に耐えうるVR機器が出たのっていつくらいでしょうか。
コヤ オキュラスDK2が出て、75フレームで動けるようになってからです。

——DK2は2014年7月に出たので、本当にすごい最近ですね。確か、VRに関する特許も2010年から増えているみたいなので、今がまさに過渡期でしょうね。
コヤ その前に、オキュラスDK1をアメリカのショーで展示しているときに、うちの「機動戦士ガンダム 戦場の絆」(注:ドームクリーン式の対戦ゲーム)のチームが直接借りてきたんです。それで、「戦場の絆」をそのまんま、当時のオキュラスに映し出そうとした。
「どのくらいでできるの?」と聞いたら、「同じだから1ヵ月でできます」と言ってて、本当に1ヵ月でできた。
——じゃあ、その時点で、VRで「戦場の絆」はできたんですね?
コヤ できていました。いまから3、4年前です。そのまんまを映して、「あ、そのまんまだ」って(笑)。
——つまり、今みたいな脳レベルで自分が動いてる感覚になるVRじゃなくて、VR空間の中でテレビ見ているみたいなことですね(笑)。
コヤ そのとおりなんです! つくってみてわかったんです。たしかにそうだよね、と。一部は立体に見えるけど、はじっこのザクはペタンとしてるぞ、みたいな。
——それはたしかにリアリティないですね。
コヤ だから、ガンダムをそのまんまやっただけだとそうなる。でもそれはそれで正しいんです。本物のモビルスーツの中は、立体視がないので、平面のディスプレイなんですね。
——VR ZONEで「アーガイルシフト」に入った時に、アイネたん(注:戦闘支援ヒューマノイド)がいて、なんかすごく「いる感じ」がしたんですが、どうしてでしょうか?

コヤ 「アーガイルシフト」は「戦場の絆」の反省もあって、ちゃんと立体に見えるようにしました。モニタを見るんじゃなくて、窓から外を見ているような感じです。ヘリコプターの窓から外を見るのと同じ設定で、敵のロボットが見えるので、立体空間の中で戦っている感じがするんです。
——なるほど、そういうことですか。
コヤ ドームスクリーンはVRではあるんだけど、立体視にしないと限界があるということです。