「小泉純一郎にあって、加藤紘一になかったもの」山崎拓が明かす「真実」

総理になれた男と、なれなかった男の違い
週刊現代 プロフィール

——「討ち死に」を覚悟したはずが、腰砕けになってしまったのですね。

政治生命がかかっているのだから、逡巡する気持ちはよく分かります。だから私は、「どっちでもいいよ。アンタが突っ込むなら、俺も突っ込む」と言いました。

ですがその直後、矢野絢也さん(元公明党委員長)から私に電話が入り、「何やってるんだ!早く行かないと政治生命を失うぞ」と発破をかけられたため、改めて私たちは国会に向かいました。

ところが、国会に近づくと、またしても加藤の心が折れてしまった。

ホテルに戻り、全身の力が抜けてぐったりしていた私に、加藤は三度、「拓さん、行こう」と言ってきましたが、私は突っぱねました。「三度目の正直というわけにもイカンじゃないか」と。加藤は一人でホテルを出ましたが、案の定というか、すぐに戻ってきました。

エリートと奇人と凡才

——『YKK秘録』では、加藤の乱の後、小泉純一郎氏がクーデター失敗を最大限に利用し、総理の座に上り詰めていく姿が生々しく描かれています。

実力は十分なのに、あと一歩で総理の座に届かなかった政治家は少なくありません。加藤紘一氏も、早くから宏池会のプリンスとして将来を約束された存在でしたが、結果としてYKKで総理になったのは小泉氏でした。

総理になれる政治家となれない政治家、違いはどこにあるのでしょう。

資質はもちろんのことですが、最も大きなものは、「運」だと思います。そして、政治センス。

加藤は私たちYKKの中で、明らかに抜きんでた存在でした。私と加藤は当選同期ですが、スピード出世していく加藤に対し、私と小泉は二歩も三歩も遅れていた。加藤が超秀才なら、小泉は奇才というか、奇人。私は凡才だと思っていた。

性格的にも私と加藤はまるで異質の存在です。しかし、なぜか初めからウマが合い、すぐに仲良くなりました。加藤は東大卒の外交官出身で世襲議員という「超エリート」。ただ本人は、エリート意識を露骨に出すタイプではありませんでしたが。

私は政治家として「一世」で、体育会系で、勉強がすごくできたというタイプではない。加藤の周りには私のような人間がいなかったので、それで関心を持ったのでしょう。対照的なタイプであるが故、一緒にいれば合板のように強くなれる、そう無意識のうちに考えたのかもしれません。

でも加藤はただの秀才ではないですよ。一度私が、「何かスポーツをやったことがあるのか」とからかったら、「バカにするな」と言って、なんとその場で宙返りをしたことがあります。身体能力にも恵まれていたんですね。あれは驚きました。