【PR】人生100年時代、激変する社会構造に対応できますか?
~充実したセカンドライフを送る秘訣

TAKANORI FUJITA

藤田 孝典

2016.09.14 Wed

医学の進歩などにより日本人の平均寿命は伸びており、国立社会保障・人口問題研究所の統計資料によれば2060年には男性84.19歳、女性90.93歳になると予測されている。100歳まで生きることがもはや珍しくない社会になろうとしているなか、長いセカンドライフを充実して過ごすための備えとはなにか。

『下流老人』などの著書で知られる社会福祉士の藤田孝典氏(NPO法人ほっとプラス代表理事)と、日本生命の商品開発部課長、神山亮弘氏、フリーアナウンサーの佐藤友紀さんが語り合った。

予想外の事態一つで、誰でも生活が困窮する事態に

佐藤友紀さん

佐藤 まずは「下流老人」という言葉の生みの親である藤田さんから見た、高齢者世帯の状況について教えていただけますか。

藤田 私は「ほっとプラス」というNPOの活動を通じて年間500件程度の方からさまざまな相談を受けていますが、とくに目立つのが高齢者からの相談です。

年金が少ないために生活に困っている方、介護や医療の費用負担で困っている方、あとは父母が介護施設に入ると生活ができなくなるのではないかという相談も多いですね。これらに共通するのは、かつて一億総中流といわれた団塊の世代が、高齢期に入った途端に状況が一転し、年金だけでは暮らせない状況になってしまっているということです。

佐藤 日常で経済的に困窮している高齢者は、どれくらいいるのでしょうか?

藤田 定義にもよりますが、たとえば現在、高齢者の約20%は、所得が平均の半分に満たない「相対的貧困」といわれています。また、先頃政府が年収155万円以下の高齢者(二人以上の世帯の場合は211万円以下)を対象に3万円を支給しましたが、この際支給を受けたのは1130万人でした。高齢者人口は約3400万人ですから、3分の1がなんらかの援助を必要としているといってもいいでしょう。

神山 高齢者のごく一部が困窮しているのなら本人の努力が足りなかったということもあるかも知れませんが、お話をお聞きする限り、社会全体として手を打たなければいけない状態になっていることがわかりますね。

佐藤 なぜ今の高齢者はこうした状況になってしまったのでしょうか。

藤田 一言で言えば、高齢者を取り巻くセーフティーネットが脆弱になったからです。第一は家族機能の低下。かつての大家族社会では高齢者を家族みんなで支えるのが普通でしたし、同居しなくても仕送りによって経済的な支援をしてきました。ところが子ども世代の雇用が不安定化した結果、仕送りができないばかりか、子どもが親の年金に頼らざるを得ない事態になってしまっています。

2番目に老後収入の減少。団塊世代以降に顕著ですが退職金がかなり減ってきましたし、公的年金も年々心細くなっています。一方で介護保険料や消費税、物価などの支出は上がっています。さらに3番目として、地域のコミュニティ機能が失われていること。以前ならご近所に困っている人がいると米や醤油などを面倒見ることもありましたが今は期待できません。

神山亮弘さん

神山 高齢期を取り巻く環境が予想以上の速度で変化したため多くの高齢者がそれに対応できていないわけですか。その意味では老後の困窮は決して他人事ではなく、誰にでも起こる可能性があるといえますね。

藤田 つい先日も一部上場企業に定年まで勤めた60代の方が相談に来ました。退職金も2000万円出たし、夫婦の年金収入はおよそ24万円ある方です。

佐藤 一般的にいえば、かなり恵まれている方ですね。

藤田 ご本人はマイホームもあるし、悠々自適に暮らせると考えていたそうです。ところが90歳になる父親が脳梗塞で倒れたことで状況が変わった。介護施設への入所を考えたところ、費用が月額15万円もかかる。この父親は無年金だったため息子家族がそれを負担するしかなく、そうなると夫婦が使えるお金が10万円以下になり、生活できなくなりそうだという相談です。

40代の息子さんのことで相談にきた男性もいました。息子さんは非正規雇用で未婚。このままではいずれ自分が面倒を見なければいけなくなる。そうなっても家族全員が生活できるだろうか、と悩みを抱えてこられたのです。

佐藤 どちらも本人以外の要因で生活苦になってしまう点が共通ですね。

藤田 その通りです。何もなければなんとか老後も暮らしていけるのですが、予想外の事態が一つでも起きると途端に生活が困窮してしまう。それは上場企業に定年まで勤めた、平均からすれば上の層に属していると思われていた人も例外ではないわけです。

セカンドライフが充実する人、しない人

神山 老後になって経済的に困る人の特徴のようなものを感じますか。

藤田 現役時代の収入も関係していますが、同時に将来に対する見通しが甘い人が多いかも知れません。最悪なことばかりを考える必要はありませんが、病気や失業、結婚していれば離婚など、ある程度予想外の事態が起きたときにどんな事態になるのか、事前にシミュレーションしていなかったことで、それが現実になったときにうまく対処できないのでしょう。

佐藤 反対に充実したセカンドライフを過ごされている方に共通するものはなんでしょう。

藤田 お金に困っていないことはいうまでもありません。旅行に行くのも趣味を深めるのも、健康を保つためにも必要な栄養をとることも不可欠で、そこに先立つ物はお金ですから。

ただしお金と同じくらい重要なのは、孤立していないことだと思います。いざというとき、身近に相談に乗ってくれる人が周りにいることが大事です。セカンドライフを充実させるには、日頃の人間関係も大事になるのです。

佐藤 誰しもが、経済的に困る可能性があることがわかりました。そのうえで、生活に困窮しないために、どんなことに注意すればいいのでしょうか。

藤田 まずは社会構造が劇的に変わったことを認識することです。かつては会社に就職すれば定年まで勤めるのが一般的でしたし、家族はお互いに支え合うことが普通でした。こうした社会常識や社会通念的な暮らしがゆるやかに崩壊してしまったということです。あとは社会として保障制度を見直すことも不可欠ですし、現状の制度のなかで困ったときに助けを求められるように専門機関や制度に関する知識をあらかじめ得ておくことも必要でしょう。

佐藤 個人でも備えるべきことはありますか?

藤田 自衛策もある程度は必要です。そのためには自分の老後にどんなリスクがあるのかを一度整理してみるといいでしょう。たとえば家族構成などから将来孤立する恐れがあるとすれば、頼れる人や困ったときに相談できる人を身近につくっておくことも考えるべきです。孤立してしまうと病気や認知症がかなり進むことが多く、手遅れになってしまうケースも少なくありません。とことんまで困らないためにも、人間関係を元気なときから充実させておくことも心がけてほしいですね。

佐藤 現状では公的な保障制度が十分に利用されていないということですか。

藤田 残念ながらそれはありますね。介護保険制度、高額療養費の助成制度、最後の最後には生活保護制度もあるのですが、こうした制度に頼るのが恥ずかしいと感じる方が多いのは気になります。私は「受援力」といっていますが、援助を受ける力、困ったときに誰かを頼る能力が日本人は弱いのです。生活保護を受けるくらいなら自殺した方がいいという方も実際にいました。これも大きな問題ですね。

佐藤 経済的な部分での自衛についてはいかがでしょう。

藤田 国や他人に頼ることに抵抗があるなら、頼らずにすむよう自分で備えることも考えるべきでしょうね。公的な年金制度だけでは不安があるなら、民間保険会社が提供する年金制度を活用するなど貯蓄を殖やす努力をするのもいいかもしれません。

左)佐藤友紀さん(フリーアナウンサー) 中)藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス代表理事) 右)神山亮弘さん(日本生命・商品開発部課長)

人生を100年で考えることが必要な時代

藤田 ここでぜひ知ってほしいのは、老後といわれる期間が予想以上に長いこと。それはすなわち、老後の備えもそれだけ多く必要だということです。先日、預貯金も底をついたとご相談に来ていた84歳のおばあちゃんは「80歳までは大丈夫なように準備していたのだが、まさか自分がこれほど長生きするとは思わなかった」といっていました。90歳まで生きることが珍しくなくなった今、極端かも知れませんが100歳まで生きることを前提に老後をシミュレーションしておく方が安全でしょう。

神山 セカンドライフを充実させるためにも人生を100年で捉えるという意識が求められるということですね。

藤田 江戸から明治時代は60歳まで生きれば長生きでした。それが今や90歳でも普通。これは医学の進歩の影響が大きく、要介護状態になった後もかなり生存できるようになっています。そうなった場合も絶望せずに希望を持って生き続けるためにはある程度の経済的な余裕は必要でしょうし、家族とのつながりも大切になる。長寿社会への備えを誰もが求められる時代になったということでしょう。

神山 ある程度資産をお持ちの方のなかには不安から過剰に貯蓄して生活を楽しめないという方もいると聞きます。その意味で、不安も二極化している気がしますね。

藤田 4000万円以上貯蓄がある80代のおばあちゃんが「これでこれからの老後は大丈夫でしょうか」と相談に来たこともあります。確かに高額な有料老人ホームに入ればそれだけでも足りないかも知れません。そう考えると老後を迎えるときにどれだけ貯蓄があれば絶対に大丈夫とはいいにくいのも確かですね。

佐藤 だからこそ、不安になったときや、経済的に困ったときに気軽に相談できる人が必要になるのでしょうね。

神山 制度の存在を知らないために利用していない方も多いのでしょうね。

藤田 知識も足りないし、知っていても恥ずかしいから使わない方もいる。経済や健康の実態からすれば、介護保険や生活保護を利用できる人で利用していない人が相当数いると私たちは考えています。これらの制度を利用することに抵抗があるなら、自分で備えることになるのでしょうが、そこも不十分な人が多い。この二つが重なった結果として老後に困窮する人が増加しているわけです。

佐藤 私自身も制度についての知識が完璧とはいえませんし、どれだけ備えているかと聞かれると、十分とはいえません。

藤田 それが普通ですよ。普通に生きてきた人が、老後になって困った状態に陥る危険が急速に高まったのはごく最近のこと。まずは、現実を知ることです。

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藤田孝典 
社会福祉士。1982年生まれ。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程修了。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授(公的扶助論、相談援助技術論など)。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障 審議会特別部会委員(2013年度)。

神山亮弘
日本生命の商品開発部課長。1975年生まれ。1997年慶応義塾大学法学部卒業後、同年、日本生命保険相互会社に入社。2016年度より現職。個人保険商品の企画・開発に携わる。

佐藤友紀
フリーアナウンサー。1980年生まれ。早稲田大学社会学部卒業後、NHK札幌放送局報道部ニュースリポーターからSBC信越放送報道局アナウンス部を経て、2009年フリーに。

 

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藤田 孝典(ふじた たかのり)

埼玉県在住の社会福祉士。1982年生まれ。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程修了。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授(公的扶助論、相談援助技術論など)。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員(2013年度)。著書に、『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』 (講談社現代新書)、『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版) 、『ひとりも殺させない』(堀之内出版)などがある。