それでも日本人はまた戦艦「大和」をつくるだろう〜この国が抱える根本的な宿痾

誰もグランドデザインを描けない…
三田紀房, 戸高一成

やっぱり「大和」に惹かれてしまう

三田 英国のEU(欧州連合)からの離脱も、そうですよね。十中八九、離脱はない、って思ってたのに、蓋を開けたら「離脱だ」ってなって全世界が驚いた。まさかないよな、って皆が思ってて、政治家も「少しでも威勢の良いことを言っとけ、どうせならないから」って感じで。そんな雰囲気が重なり合って歴史が大きく動いていく。サプライズの瞬間を見た。

戸高 そんな"流れ"の根底には人々の意志がある。だから皆がキチっとした対応をとっていれば間違いないんだけど、微妙にズレていく。

三田 論理に裏付けされない、軽はずみな行為・発言がいかに危険であるか、リアルに見せられた。対米開戦を決する時、強硬派の人も実は開戦になると思っていなかったんじゃないかな、と。

戸高 絶対数では少ないんだけど、声の大きな人の意見が通ってしまった感じですね。勢いのある方向に最後の瞬間、傾いてしまう。そこが恐いですね。

 


── なぜ人々は「大和」に惹かれるのでしょうか?

戸高 やっぱり知らなかったからですね。「大和」はね、国民が知った時には、もういないんですよ。知らないうちに造られて、知らないうちに沈む。敗戦後に初めて知る。

あんなボロボロに負けた日本にも世界一の戦艦があった。それが空襲で焼け野原になった日本で、打ちひしがれた日本人が復興する心の支えになった。それがもう一度、頑張れる気持ちになった。

三田 あと「大和」はデザインが素晴らしい。これを超えるデザインはない。究極の戦艦ですよ。未来永劫、人の脳に残る美しい形、それが戦艦「大和」と「零戦」。美しいから、ずっと心に残る。このデザインを当時、創り得たってのは神懸かってるなと思います。文化の結晶ですね。

日本人って、雅に創りたいじゃないですか、なんでもかんでも。駅弁とかでさえ開けた瞬間「あぁ」ってなる(笑)。そんな"美しさ"とあっけなく散った"はかなさ"。それが日本人の心をがっちり掴んでる。

戸高 たしかに「零戦」も無骨で機能重視の米軍機と比べると、ホント堀越さん(「零戦」設計者・堀越二郎氏)は、いらんところに苦労して形にしたなと(笑)。"美しくなければならない"って気持ちが最後まである。まあそれが後世にも残る所以ですよね。

三田 常に美を追究する日本人の感性が作った傑作ですね。誇りに思います。本日はありがとうございました。戸高館長、最後に作品に何かあれば。

戸高 平山さんを、あんまり悪く描かないでください(笑)。

三田 分かりました(笑)。

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