それでも日本人はまた戦艦「大和」をつくるだろう〜この国が抱える根本的な宿痾

誰もグランドデザインを描けない…
三田紀房, 戸高一成
©三田紀房

グランドデザインの欠如

三田 今、日本に何が必要なのかが分かっていない。結局、グランドデザイン(明確な目的を持って遂行される大規模長期計画)が描けてない。

日本は、島国なのが影響してか、スケール感があるものは、あまり得意じゃないな、と思うんですよね。ピンポイントで小さいエリアを巧く造るのは非常に上手なんだけど、大きな設計図を描いて、そこに何が必要か、と構想するのは意外と苦手。

いろんなところで議論を始めちゃって、纏まらないまま「じゃあ、グランドデザインはいいから、ピンポイントで造り始めよう」ってなる(笑)

 


戸高 そこは、もう職人技術の世界ですよね。ですから末端の技術は、もの凄く高い。ジグソーパズルのピースの完成度は高いけれど、誰も組み上がった絵を知らない。

アルキメデスの大戦 第2巻
戦艦「大和」は無駄か?

三田 そうそう。でも、能力が高いから、職人だから、それでも最終的に良い物が完成してしまう。「ああ、これ、いいな!」って、そこで満足しちゃう。

戸高 でも、工業製品ってのは、エンジニアの持っている技術が高いだけでは、本当に良い製品にならない。高い技術力は、明確な目的意識が示されてこそ初めて活かされる。これは「零戦」も「大和」も一緒ですよ。

技術力だけが進んでいって、それが完成した時、何のために、その技術が要求されたのか、分からなくなってしまう。戦いに勝つことが最終目的なはずなのに、「航続距離が長い」「世界最大の巨砲を搭載している」と、個々の能力だけが語られてしまう。それは、ぜんぜん本質が違うだろうと。

何のために開発され製造されるのか?っていうコントロールが、日本はできていなかった。

三田 「零戦」、「大和」は本当に、そうですね。技術力だけを追究して、どうやって運用するか、っていうドクトリン(教義、行動指針)が全く追いついていない。

戦争って、政治的なグランドデザインに基づいてドクトリンが研究され、そのドクトリンに従って、戦略、戦術、作戦、戦闘の順で行われますが、日本軍では戦術のみが重視され、誰も戦略を研究していない。結果、個々の戦闘で勝利しても、それを、より高いレベルの戦略的勝利に結び付けられない。

これは時代を超えて、今の日本でも全く同じだと思うんですよ。この"グランドデザインの欠如"ってのは、日本の最大の欠点だと思うんです。日本人はグランドデザインを主張することを自重してしまう、っていうか、あんまり大きなことを言うと猛烈な攻撃が来る。皆、それで臆病になってしまう。

戸高 でも会社社長や政治家は、細かいことは専門家に任せてね、ぜひグランドデザインを考えて欲しいですよね。