なんて奇妙な日本国憲法!死ぬことの理由さえ与えてくれないなんて~自衛隊「特殊部隊」創設者と「紛争解決人」の嘆き

伊藤祐靖, 伊勢崎賢治

伊勢﨑:能登半島沖不審船事件で、「みょうこう」の若い乗組員が、死を覚悟するあたりを読むと、海自の隊員はきわめて真面目に考えているようにも思えますが。

伊藤:彼らこそ普通の若者だったんです。宝くじやパチンコの話しかしない(笑)。それがわずか10分で一気に変わったわけです。そこが私には心配なんです。それまで自分が戦死するなんて考えたことがない人間が、あっという間に「私は死にますから、あとはよろしく頼みます」と言えてしまう。それが日本人なんですね。言い換えると、自分のポリシー、考えよりも、大勢の流れに身を置くことを重んじてしまう。自分の命さえそこへ委ねてします。

伊勢﨑:それは、大義が時間をかけて醸成されなくても、死ねちゃうという。日本人らしい。

伊藤:これは今に始まったことではなく、学徒出陣で特攻に志願した先輩たちもそうではなかったかと思います。遺書を読むと、けっして戦争に向いている人たちではないんですね。それでも、仲間がみんな行くというのに、自分だけ断るわけにはいかないとか、故郷の親が肩身の狭い思いをするとか、そういう理由で命を投げ出したように思えます。これは悲劇でしょう。

日本では、普通の人、ちゃんとした人に限って、コントロールしやすいのだと思う。だから、上に立つ人間が間違えると、たいへんな悲劇になるのです。

9条があるから戦争がなかった、は大間違い

伊勢﨑:だから、自衛隊はきちんと憲法で位置付けなくてはいけないというのは、説得力がありますね。護憲派に対しても。

伊藤:今の憲法は、生い立ちに問題があることは間違いないんですから、少なくとも出し直すということは必要ですよね。極論を言えば、議論をした結果、内容的にはすばらしいものなので、一字一句変えないとしても、出し直す必要性はあると思います。書かれている内容以前に、とにかく、英語の直訳だとか、押し付けだとか言われてるものをそのまま放置しておくということが大問題であり、おかしなものを、おかしなまま放置しておくという姿勢について、ちゃんと考えてみるべきだと思います。

伊勢﨑:「9条のおかげで日本は戦争をしないですんだ」みたいなのは、単なる事実誤認ですからね。僕は今、「新9条論」というのを言い始めています。(https://www.cataloghouse.co.jp/yomimono/160112/)

戦後、9条の下でも「戦争」……自民党小泉政権そして民主党政権でも特措法でやってきた集団的自衛権の行使です……をやってきた日本。

通常戦力で世界5強に入った軍事大国としての日本。

そして、世界で最も戦争するアメリカを体内に置き続ける……それも、ドイツ、イタリア旧敗戦国は米軍基地もしくは空域の管理主権を回復しているのに、まったく変わらない唯一の地位協定を維持し続ける日本。

もう、9条の「解釈」は限界にきているし、この現実を純粋な9条の解釈に戻す政治力は、もう生まれない……。ならば、という気持ちでです。