なんて奇妙な日本国憲法!死ぬことの理由さえ与えてくれないなんて~自衛隊「特殊部隊」創設者と「紛争解決人」の嘆き

伊藤祐靖, 伊勢崎賢治

警察にも特殊部隊を

伊勢﨑:アメリカが、パキスタンに潜伏していたビン・ラディンを殺害しましたが、あれって暗殺ではなく、アメリカ大統領がその成功を公表し国をあげて祝った軍事作戦なのです。加えて、アフガニスタンだったらともかく、パキスタンはアメリカの「交戦」領域として認識されていない。

まあ、パキスタンへのとんでもない主権侵害なんで、当然オバマさんは、パキスタン民衆の反米意識が高揚するリスク……事実そうなりましたが……をとったのですが、国際社会では「まあ、特殊部隊がやったことですから」みたいな話で片付けられてしまっている(笑)。

そこで、ちょっと考えたのですが、自衛隊じゃなくて警察組織の中に、伊藤さんが創設した特殊部隊を移せないものかと。それならば、日本近海で今まで以上にガンガンやっても平気ですよね。

伊藤:ただ、警察と自衛隊とでは、人間が違うというのもあるんです。警察官は、犯罪を未然に防ぎ、説諭・説得によって投降を促す、という精神が身にしみついているんです。なかなか殲滅というわけにはいかないかもしれません。

伊藤氏(右)と伊勢崎氏(左)※プロフィールは最終ページに掲載

伊勢﨑:そのくらいの差であれば、まあ、なんとか訓練の内容を変えて。だめですかね。せっかく陸上自衛隊にも特殊部隊(特殊作戦群)を作ったのですから、これも警察に移す。少なくとも国際社会に対しては「警察力」だと言い張って。そうすれば、何をやっても、形式上、軍事行動ではなくなり、9条問題もクリアできる。漁民を装った武装集団なんかは、警察として、必要であれば殲滅できるのではないですか。

このへんは、僕自身の東チモールのケースや、アメリカのビン・ラディンの殺害にあるように、国際法の運用のグレーなエリアで……これは如何ともしがたいのですが……、逆に、こちらの体制とそのロジックを、何が起きても一貫して説明できる度量と胆力を備えていれば済む話だと思うのですが。

伊藤:法規の解釈に関しては、専門ではありませんが現場とすれば、国が、「これで行くぞ!」というものをきちんと示してさえくれれば、その理屈に多少無理があろうとも、みんななんとかやると思います。ところが、私が現職だったときもそうですし、その後も、国が筋道を通して何かを示したのを見たことがない。それがこの国の特徴でもあるし、そろそろ何とかしなくてはならない問題です。

日本人は流されやすいのか

伊勢﨑:伊藤さんみたいな人が自衛隊には多いのですか?

伊藤:う~ん……私自体があの事件をきっかけに大きく変わりましたから。何が変わったかというと、本気の度合いです。1分後にも出撃が命ぜられ、命のやりとりが開始されるかもしれない。それに備えるために今何をするべきなのか? なんて考えているのはごく一部だと思います。実際に私が見たことがあるのは、陸海の特殊部隊員、空自のスクランブルパイロット、メディック(救難隊員)くらいです。

私で言えば護衛艦に乗って対潜水艦の訓練をしていたときに、心の底からどこかの国の潜水艦と戦闘になる、その時に任務を達成するために今何をすべきか、今の方法でいいのか、他にもっとすべきことがあるのではないのか、と考えていたかというと、そんなことまったく考えていませんでした。決められた訓練の仕方を決められた頻度でこなすということを考えていたに過ぎません。

だからこそ、役所としてはうまくいっていたところもあります。ところが、特別警備隊ができてから、本気でどうしたらいいかを考え、意見を言う連中が増えちゃいました。上からすると、面倒な奴が増えたという一面もあるんです。

伊勢﨑:みんな、そんなに本気じゃないのですか?

伊藤:何人かの将官は真面目に私たちのマインドを広めていこうと考えていたと思いますが、そうではない勢力もあったと思います。面白いのは、真面目な人は陸自に多いんですね。海自と空自は領海、領空を守っているので、敵を見ているんです。その切実さを知っているはずなのに、慣れてしまって、「どうせなんとかなるんだよなあ」と、真面目さを失ってしまう。

陸自は、PKOには出ていますが、それほど殺意をもった敵を見る経験がないんです。それが逆に、こういう問題を真面目に考えているんですね。