あなたには、国のために死ぬ覚悟がありますか?~自衛隊「特殊部隊」創設者と「紛争解決人」が悩み抜いた末に出した答え

伊藤祐靖, 伊勢﨑賢治

伊勢﨑:そうですね。僕ら、傭兵みたいなものですね(笑)。一方で、イラクで犠牲になった外交官の奥克彦さんがいます。生前、彼とは親しくしていました。僕が国連PKOにいたとき、彼は外務省の国連政策課長で、僕たちを国としてサポートするポジションにいましたから、帰国したらよく飲む仲でした。

彼は将来を約束されたキャリア外交官でしたが、飲むたびに、「伊勢﨑さんがうらやましい。僕も行きたい」と言っていました。そうこうしているうちに彼は駐英日本大使館勤務になり、たまたま僕がオックスフォード大学で講義があってイギリスに行ったときに再会したら、「これからイラクに行くんです。やっと現場に行けます」と目を輝かせていました。それが最後の会話でした。

彼には、もちろん、大義があったんだと思います。国連としての東チモールではなく日本政府代表としてのアフガンの時の僕と同じで、その大義の一部を占めていたのは「国益」でしょうね。それは一緒に犠牲になった井ノ上正盛さんもそうだと思います。

ところが、外務省は、日本のイラク政策の中で彼らをイラクに送ったのに、その死を〝美談〟にするだけで、省内では誰も責任をとらなかった。だいたい、あんなところに軽防弾車で行かせたわけですよ。重防弾車がなかったのか。日本の外務省は装備の配備が遅くて、急遽必要なものがあっても、だいたい他の国よりも半年くらい遅れる。誰の命令で送られ、どういった危機管理をしたのか、まるで検証されていない。

伊藤:これで外務省には、職員を命令で送り出して死亡しても、誰も責任をとらなくていいという前例ができたわけですね。いかにもお役所がやりそうなことですが、これこそやってはいけないことですよね。

伊勢﨑:奥さんが、「命をかける」といった形容詞を使ったとは思いませんが、彼にはリスクをとってもやろうとする大義があったのは間違いない。

結局、この問題では、国が、リスクを上回る大義を与えられるか、そして、そこで何が起こっても、国として全責任をとれるか、ということが重要だと思うのです。

伊藤:そこが問題ですね。でも、私からすると、国が何を考えているのか、よくわからないんです。国としての理念があって、その理念からするとどうしても許せない事態が起きているから、死ぬかもしれないけど行って来い、と言われたら、われわれは、「わかりました!」と行くんですよ。しかし、「しょうがないだろう」とか「政治の要請だから断れない」という感じなら、命令ごと断りますよ。

伊勢﨑:自衛隊に関しては、憲法的にその存在が認められていないのに、どうやって大義を与えられるのか。そんなことは無理でしょう。

伊藤:誰が見てもおかしいですからね。この憲法をなくすか、自衛隊をなくすかしないと、おかしいでしょう。

【後編に続く】

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