タイムリミットはすぐ!なのに……不妊治療「後進国」ニッポンの真実

件数は世界一、でも出産率は世界最下位
浅田 義正, 河合 蘭 プロフィール

最下位ニッポン

不妊治療は保険が適用されないものが多く、お金もかかるのが、もうひとつの大変なところです。

検査や、一般不妊治療と呼ばれる「タイミング法」「人工授精」のような方法ではそこまで高い費用はかかりませんが、体外受精や顕微授精ともなれば、1回につき数十万円から、高い施設では総額で100万円くらいになることもあります。経済的な面から見ても、そんなに長期にわたって行えるものではありません。

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「効率」という言葉は味気ないかもしれませんが、この「限られた時間」「限られたお金」を有効に使えるかどうかが、不妊治療では、否応なしに求められるのです。

それなのに、残念ながら今の日本の患者さんは必ずしも効率を考えた治療を受けていないようです。日本の文化には「できるだけ自然にしているのがよい」という無為自然を尊ぶ考え方がありますが、そのためか、まず治療の開始年齢が遅いという傾向があります。

なかなか妊娠しなくても「そのうち、妊娠するでしょう」と思い、年齢がかなり高くなるまで医療施設での不妊治療を考えないのです。このことは、日本で今よく売れている不妊の本のほとんどが、食事の改善や「冷え」予防など自然療法の本であることを見れば一目瞭然です。

また、医療施設での不妊治療を始めた場合も、「薬の使用はできるだけ控えたい」と望む人が多いのも特徴です。

こうした自然志向の結果、自然療法や薬を控えた治療に時間をかけすぎて、いざ本格的な不妊治療に切り替えることにしたときには、妊娠できる卵子がすでに少なすぎる人が目立ちます。そして、治療を始めてもなかなか妊娠に至らないのはつらいことですから、次第に心も身体も疲れ切ってしまいます。

意外に思われるかもしれませんが、じつは日本のART(生殖補助医療)の治療成績は、国際的に見ると際立って低いのです。その背景には、こうした日本独自の事情があります。

世界各国のARTの実施状況をモニタリングしている組織「国際生殖補助医療監視委員会(International Committee Monitoring Assisted Reproductive Technologies:ICMART)」の報告によると、日本は、1回の採卵あたりの出産率が60ヵ国・地域中で最下位でした。

累計出産率の順位はもう少し良いのですが、それでもドミニカ共和国、イタリアに次いで最下位から3番目です。

筆者の浅田は、不妊治療に関する国際学会へよく行きますが、日本の技術レベルが低いとは思いません。

浅田が若かった頃は欧米の技術を「すごい」と思って見ていましたが、近年は、日本のトップレベルの施設で行われている治療は、むしろ欧米より技術的に高いのではないかと思います。