タイムリミットはすぐ!なのに……不妊治療「後進国」ニッポンの真実

件数は世界一、でも出産率は世界最下位
浅田 義正, 河合 蘭 プロフィール

厳しい現実

「それでは、ピルを飲めば昔の女性と同じ状態になるのではないか」と考える人もいます。ピルは排卵を抑制するため、たしかに婦人科疾患の予防にはなりますが、妊娠で起きる変化のすべてをピルで起こすことはできません。

バースコントロールの影響なしに年齢による違いを見るもうひとつの方法は、ART(体外受精などの生殖補助医療)の年齢別の成績を見ることです。こちらは、かなり厳しい数字になっています。

日本産科婦人科学会のデータによると、ART1回あたりの出産率(子どもが生まれた率。本書では「出産率」は死産をのぞいた率とする)は、30代はじめまでは下がりません。約2割で安定しています。これが40歳になると1割を切ってしまい、45歳では1%を切ります。

年齢が上がると子どもが生まれにくいのは、流産が多いためでもあります。このデータを見ても43歳では半分、40代後半ではなんと約8割が妊娠しても流産となってしまい、出産に結びついていません。

これは1回あたりの出産率です。体外受精は、何度か繰り返せば累積の出産率は上がっていきます。また、これは全国の平均値ですが、妊娠率の高い専門施設では出産できる割合はもっと高くなっています。しかし、1回あたりの成功率があまりにも低い年齢になると、そうした差もあまりなくなってしまいます。

厳しい事実を次々に紹介してきましたが、こうしたことがわかれば、不妊治療は「限られた時間しか使えない」ということに納得していただけるのではないかと思います。

では、どうしたらよいのでしょうか。時間が限られているのであれば、大切なのは「効率」を考えた治療を行うことではないでしょうか。