【プロ野球特別読み物「育てる」】 完成品をカネで買う巨人・阪神の時代はもう終わった

週刊現代 プロフィール

現代っ子・山田の導き方

有原の実力が一気に開花した昨年、「トリプルスリー」の偉業を達成したヤクルト・山田哲人内野手(24歳)はプロの世界に入った5年前、野球以前のことに課題があった。

ヤクルト元監督で、OBの若松勉氏が、山田にティーバッティングのボールをあげていたとき、突然、山田が手のひらをおさえた。若松氏が心配顔で「手首を痛めたか」と尋ねると「マメがヤバいっす」と返答。大先輩に対するあまりにも軽すぎる言葉遣いに、周囲の選手は怒った。

当時、チームメートだった評論家・宮本慎也氏が明かす。

「スイングスピードが速く、バッティングには非凡なものを感じましたが、入団当時の言動はまさに『現代っ子』でした。一緒に自主トレをしたときに練習で手を抜くことがあったので注意すると、『オレはやっているのに』という表情を見せる。

でも、入団当初からずっと言っていたのは『有名になりたいっす』。その気持ちは大事なことなので、『スーパースターになりたいなら、三拍子揃わないとダメだぞ』と刺激を与えました」

入団2年目までは一軍に定着できず。3年目、二軍打撃コーチに就任した杉村繁コーチの指導で、得意としていた引っ張る打法だけでなく、広角に打つ技術を習得し、才能が開花した。

試合前に約30分かけて行うティーバッティングは11種類。いろんな球種に対応できるスイングを作ることが目的だが、何かと横着をしていた男が、これだけは今でも続けている。杉村コーチは、練習以外の対話も、大切にしていた。

「モチベーションをあげるために、おカネの話をしたこともある。宝くじ1等の当選確率は1000万分の1と言われるけど、プロ野球界の1割弱の選手が1億円プレーヤー。こっちのほうが確率が高いだろ、と。名誉も、大きな家も、きれいな嫁さんも手に入るぞ、とね」

4年目の'14年には日本人の右打者最多安打の193安打を放ち、昨年はトリプルスリー。「次のステップにいきたい」という欲が山田を成長させた。

入団時から3年間寮長をつとめた松井優典氏(現・ファームディレクター)が明かす。

「まさに地位が人を作る、という典型だね。入団当時は緊張する素振りさえ見せなかった選手が、今では『明日は打てなくなるかもしれない』と不安を口にするのは、それだけ責任を感じながらプレーしている証です。

ウチの場合、FAやトレードで大金を使って選手をとることは難しい。だから自前の選手を育てるため、いい素材を持った選手はミスに目をつぶっても使い続ける。山田も二軍の時から、優先的に試合で使われました。

私は何事も、続けることが大事だと思っています。練習も試合も、続けることで結果が出て、そこで努力の方向性があっているか間違っているかがわかるんですから」

山田より2年早くプロの世界に入った巨人・大田泰示外野手(26歳)は、長距離を打てる俊足野手として山田よりはるかに騒がれたが、常勝を求められる巨人では、結果が出なければすぐに控えに回され、大田はプロ8年間でまだ、一軍で確固たる地位を確立できていない。ヤクルトと巨人、ミスに目をつぶる度量の大小により、山田と大田に大きな差が生まれた。

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上田