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傷ついた新人をどう使うか

日本ハムにはもう一人、難しくてマイペースな男がいる。大谷と並ぶ右腕エースに成長した2年目の有原航平(23歳)は、2年前の入団直前、体にも評判にも「傷」がついていた。アマチュア野球担当記者が明かす。

「有原は右ひじに不安を抱えていたので、早大では勝負どころでしか全力で投げなかった。

さらに、マウンド上の態度を問題視されたこともありました。リーグ戦でピンチを迎えたとき、マウンドに駆け寄ろうとした早大・岡村猛監督を手で制する仕草を見せたんです。

追い払ったのか、『まだ続投できる』という意思表示なのか、真意は定かではありませんが、アマチュア野球関係者は問題視した。'14年6月、大学日本代表からもれることにつながったのです」

それでも、日本ハムは有原を指名した。球団関係者が明かす。

「ウチはMAX156キロの速球を投げられる彼の能力を最大限評価しました。マウンド上で表情を変えないし、飲み会も1次会で帰ります。『俺は他の人と違うんだ』というオーラを出したい部分もあるでしょうが、それはむしろ、プロで生きていく上で必要なメンタリティーです」

捉え方ひとつで、主力にも、不安分子にもなる。日本ハムは前者に賭けた。

昨季、即戦力として獲得したが、有原が将来、長く活躍できるよう、球団との間でビジョンを共有した。まずはデビューまでの計画を立て、二軍での登板間隔、球数まで決めた。昨年2月、新人で春のキャンプを迎えたとき、ひじの痛みは引いていたが、それでも有原は投球を控え、ひじに負担がかからない体作りを最優先した。

日本ハム担当記者が明かす。

「意図的に練習のペースを制限していたので、普通のドラフト1位選手なら、不安が先行します。そこを栗山監督がフォローしました。有原の二軍でのピッチング練習を一日も欠かさず見に来たんです。

監督が二軍の試合に来ることは珍しくないけど、練習にくることは異例。『期待しているぞ』というメッセージを示し、有原を安心させたかったんだと思います」

有原は5月に一軍に昇格し、8勝をあげ、新人王もとった。今季もすでに9勝し、入団時の故障の不安は一掃された。

日本ハムは一軍の実力者には年齢を問わず、ひとりの「大人」として尊重する。年長者が「こうしろ」と強制することはない。確固たる自分を持つ大谷や有原のような男にとっては、どんどん成長できる環境なのだ。

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上田