【プロ野球特別読み物「育てる」】 完成品をカネで買う巨人・阪神の時代はもう終わった

週刊現代 プロフィール

2年前の夏にも、同様のことがあった。

同年7月に9勝目をあげ、その後4試合勝ち星から遠ざかった。2ケタ勝利まであとひとつ、と迫っていたとき、厚澤和幸投手コーチ(現・ベンチコーチ)から「もっと緩いカーブを使って、ピッチングを組み立てたらどうだ?」とアドバイスされた。しかし大谷は「カーブは、自分の中でまだ使えるボールにはなっていません」と、聞く耳を持たなかった。

取材を続ける日本ハム担当記者が明かす。

「彼は反抗的な態度や不愉快な表情は出さないので、表向きスマートに見えます。でも、自分で納得したことしか飲み込まない性格です。そこは22歳ですが、一流のプロ選手らしい一面です。

日本ハムは栗山監督の方針で、選手が自分にとって何が必要で、何が足りないのかを自ら見極め、解決策を見出すため、選手から尋ねてこない限り、監督、コーチは口出ししないことを徹底しています。

それでも厚澤さんから声をかけたのは、大谷を何とかしたい、という『親心』です。大谷をよく知らない人から見れば、大谷の返答は『何様のつもりだ』と誤解を受けるかもしれませんが、大谷に悪気はない。結局、大谷はその年、勝ち星を11まで積み上げ、エースに成長しました」

話には続きがある。

翌'15年、大谷はオールスター前までに10勝をあげた。有効だったのは、緩いカーブ。自分が納得いくボールに磨き上げ、結果を出したことで、厚澤コーチの「顔」も立てた。

日本ハムOBの評論家、岩本勉氏が明かす。

「7月3日、投手・大谷がソフトバンク戦に1番打者で出場しました。陽岱鋼の代役として1番で出たほうが、普段数多く出ている3番のときより、直後の(立ち上がりの)投球に影響が少ないからです。

悪い見方をすれば、他の選手の起用法への『しわ寄せ』が発生する。それでも不協和音が生じていないのは、大谷が成績を残し、フロントや現場、ほかの選手とのコミュニケーションが図れているからです」

なかでも栗山監督はマメだ。選手より早く球場に姿を見せ、選手ひとりひとりにあいさつし、必ず一声かける。毎日繰り返す中で、表情で選手の状態、心情の深い部分まで把握しようと努めているのだ。もちろん、大谷との雑談も日課だ。

米国・アリゾナキャンプを張った今年の2月6日。栗山監督は、大谷に開幕投手を告げるのに粋な演出をした。

その日はベーブ・ルースの誕生日。ルースの使用したバットなどが置いてある部屋に呼び出した。ルースと同じ「10勝、10本塁打」を達成した大谷に敬意を払い、「偉大な選手と肩を並べているんだぞ」というメッセージを伝えたかったのだ。

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スポーツコミュニケーションズ
上田