最強の情報参謀が緊急レポート!報道占有率でわかる参院選「無風」の正体

結局、自民勝利の理由はマスゾエだった?
小口 日出彦

突風が参院選をかき消した

6月24日から25日にかけては、「英国のEU離脱が国民投票で決まる」という大事件が発生し、7月2日には「バングラディッシュのレストラン襲撃テロ」に日本人が巻き込まれる緊急事態が発生した。前者は、大方の予想を覆す大ドンデン返し、後者は予想もしなかった大災禍であった。

当然、この二つの事件の報道量は参院選を超えた。

英国のEU離脱は6月25日の報道占有率48%、バングラディッシュ・テロは7月4日の報道占有率44%。この二つのトピックは、舛添都知事関連報道のような“ロングラン”はしなかったが、参院選の各党間の議論を吹き消すには十分すぎるパワーを持っていた。

しかも、第一週末の政調会長クラスによる討論では、野党側に決定的なエラーが出た。共産党の藤野保史氏(政策委員長、6月28日に辞任)による「(防衛費は)人を殺す予算」発言だ。この発言については、自民党はもちろん他党の出席者からも「修正」を求める批判がその場で相次ぎ、共産党の志位和夫委員長も翌日、たしなめるコメントを出さざるを得なくなった。このとき、今回の選挙で協力し合った民進党が同意も批判もしなかったことも話題となった。

選挙前には「都知事スキャンダルの暴風」が吹きすさび、討論の当日には「英国EU離脱」の突風が吹いている中で、藤野氏のような発言は、100%言い訳の効かない失言と言える。発言内容にどのような信念があったとしても、発言すべき場面の判断を間違っていた。

一方、自民党はこの失言を逃さずとらえ、選挙戦の後半に向かって「主義主張が異なる政党同士が選挙のためだけに協力している」点を突いていった。

そのうえ、参院選の第一週末と第二週末に発生した2つの事件は、いずれも日本政府としての危機管理を問われる事態だったから、「総理をはじめとする閣僚が適切な対応を行う」という当たり前のことをするだけで十分な露出を得られ、対策を誤らなければ「頼りになる」印象を人々に与えられるのである。自民党にとっては、ますます「無風で有利」になったと言える。

こうした情報世界の状況を、自民党はほぼリアルタイムで掌握していたと思う。今回の選挙では、私が本稿で提示したバブルチャートは見ていないはずだが、このような情報分析のノウハウを2009年から4年間の野党時代にかなり蓄積したからだ。

世論調査の「必然」と、報道状況の「偶然」が重なったことで、今回の参院選は与党・自民党には戦いやすい選挙になった、と言えよう。

ただし、私見として付け加えるなら、結果は世間に伝えられるように「改憲勢力2/3達成で勝ち」とは言えないと思う。全体的に有利な状況が重なったのにもかかわらず、北海道から東北各県、新潟、長野、そして沖縄などでの「負け」は大きい。これから、夏、秋へかけて、その「傷」は世論や報道データに必ず表れてくるだろう。