メディアが報じない参院選挙制度の「隠れた欠陥」〜自民党「圧倒的有利」には理由があった

都市有権者の声はどこへ?
菅原 琢 プロフィール

農村・衰退地域を支持基盤とする政党が有利

図表1は、この点を理解するための仮想例を示している。左の例1では、20の小選挙区で都市党と農村党の二大政党が争っている。都市党は支持基盤が厚い都市部の10の選挙区で勝利し、農村党は農村部の10の選挙区で勝利している。

これに対し例2は、都市党の勢力が大きな小選挙区1~10が定数2の中選挙区A~Eに再編した場合の結果を示す。

なお、中選挙区の選挙では、第三党の出現や複数候補間の票割りや集票競争による票の掘り起こし、適正な数の候補を擁立できるかなど、複雑で細かい問題もあるが、ここでは無視している。

つまり、両党は小選挙区時と全く同数の票を、適切数の候補者間で均分できるという仮定のもとでの選挙結果を示している。

この例2を見ると、小選挙区では都市党が議席を独占していた中選挙区において、農村党が一定の議席を獲得することに成功している。

これは、小選挙区と中選挙区の制度としての性質の違いのためである。小選挙区は、得票が少しでも上回った候補のみが議席を得ることができる「勝者総取り」の結果となる。

これに対し中選挙区では、より比例的な結果となる。このため、小選挙区であれば特定政党が議席を独占できる地域であっても、中選挙区で選挙を行えば、より劣勢のほうが議席を獲得しうるのである。

ここで重要なのは、選挙区の定数が政党の支持率と相関している点である。図表1の例2において、各党の支持基盤の厚さと無関係に中選挙区が設定されていたならば、どちらかの政党に過剰に有利になることはない。

だが現実ではこの両者は相関しやすい。人口が流入する都市部は中選挙区に、人口が流出する農村部は小選挙区になる傾向にある。また多くの場合、政党の支持率は都市度と相関する。

小選挙区と中選挙区が並置される参院選挙区のような制度は、人口が流出する衰退地域に厚い支持基盤を有する政党に、過剰に有利なものとなるのである。