台湾に親日家が多い「本当の理由」意外と知らない“日台関係の深層”

直木賞作家がひも解く
乃南 アサ

もちろん台湾には、もともとの住民がいた。何部族もある原住民族たちと、中国大陸から渡ってきた漢族系の人たちだ。それらの人々の運命は日本によって大きく左右された。

生い立ちや立場によって好転した人もいれば、生命を落とした人もいる。新たな教育を受ける機会を得た人もいれば、自分たちのアイデンティティを失い、差別に泣いた人もいる。そして、日本が戦争に突き進む中、彼らもまた否応なしに同じ歴史の渦に巻き込まれていった。台湾の人たちは「日本人として」終戦を迎えたのだ。

なぜ台湾に親日家が多いのか?

この疾風怒濤の五十年間を、きちんと整理しながら知っておく必要があると思った。出来ることなら文章で読むだけでなく、ひと目で分かる写真や図版も取り入れたいと考えていたら、今回、国立台湾歴史博物館の全面協力を得ることによって、『ビジュアル年表 台湾統治五十年』として書き上げることが出来た。

台湾に親日家が多いのは、植民地だった過去があるから、とばかりは言い切れない。台湾は日本の植民地でなくなった後も実に困難を伴う複雑な道を歩んで現在に至っている。

だが、震災などに見舞われれば互いに義援金を募り、心を寄せ合う、今も私たちにとってもっとも身近な島であることには変わりはない。本書をきっかけに互いの間に横たわる歴史を改めて知り、台湾に溢れている「なぜ」に興味を持っていただければと願っている。

乃南 アサ(のなみ・あさ)1960年東京生まれ。'88年『幸福な朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。'96年『凍える牙』で第115回直木賞、2011年『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞、2016年『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞。主な著書に、『ライン』『鍵』『鎖』『不発弾』『火のみち』『風の墓碑銘(エピタフ)』『ウツボカズラの夢』『ミャンマー 失われるアジアのふるさと』『犯意』『ニサッタ、ニサッタ』『自白 刑事・土門功太朗』『すれ違う背中を』『禁猟区』『旅の闇にとける』『いちばん長い夜に』『新訳 にっぽん昔話』『それは秘密の』など多数。訪台をめぐる随筆の近著に『美麗島紀行』がある。

読書人の雑誌「本」2016年7月号より