「アベ政治に反対」と野党が叫ぶほど、安倍首相が指導力を発揮しているイメージは強化されるという“逆説”

知っておきたい政治の「シンボル作用」
佐藤 卓己 プロフィール

政治のシンボル作用

さらに、同じく社会党の後継政党、社民党の「アベ政治の暴走を止める」という標語も、「一強多弱」の現状を裏書きするものだ。安倍首相が「アベノミクス」と自分の名前を冠して使うのは、自らの強力なリーダーシップを打ち出したいからである。

実際、複雑な政治プロセスを「アベ」と人格化するわかりやすい表現は、それだけで有権者に安心感を与える。大衆社会における指導者の機能は、個人では理解も制御もできない政治の複雑性を指導者という人格に縮減することで人々の不安を解消することにある。

つまり、野党が「アベ政治に反対」を連呼すればするほど、安倍首相が指導力を発揮している躍動的なイメージは強化されるわけだ。政治のシンボル作用について、野党はもう少し慎重に考えてもよいのではないだろうか。

シンボル政治学の古典、マーレー・エーデルマン『政治の象徴作用』から次の一文を引用しておこう。

「政治的要職の現職者は攻撃を受けたからといって、力量ある指導者という印象が損なわれるわけではない。むしろ、攻撃が加えられた結果として、彼の行動が支持されたり称賛された場合以上に、そうした印象は強められるはずである。

攻撃をしかける側は事実上、現職者の目下の行動力や実行力を関係者すべてに保証しているのである。とりわけ、攻撃する側が現職者自身や彼が行っていることに対して好意をもっていないと分かっていれば、なおさら、現職者が事態に強い影響力を発揮していることを確証する十分なよすがとなる」

だとすれば、今回の日本の参議院選挙も事前の情勢調査どおり与党圧勝となりそうだ。

ちなみに、エーデルマンは「曖昧なるもの」を単純化する世論調査については、その体制維持的な影響力を批判している。世論調査は投票がもつ正統性の認証機能を適用拡大し、社会システムを安定させているというのだ。