「アベ政治に反対」と野党が叫ぶほど、安倍首相が指導力を発揮しているイメージは強化されるという“逆説”

知っておきたい政治の「シンボル作用」
佐藤 卓己 プロフィール

選挙では「勝利のイメージ」が大切

イギリス国民投票の翌日、6月24日に新聞各紙は7月10日投開票の参議院選挙における各党獲得議席予想を伝えていた。

各紙で数字にばらつきはあるものの、自民党が単独で過半数となる57議席を得る可能性が高い。「改憲勢力 3分の2うかがう」という見出しも各紙で一致している。

もちろん、その翌日からイギリスEU離脱ショックによる株価急落、円高更新のニュースが続くわけだが、これがアベノミクスへの打撃となったとしても、はたして選挙で与党に不利に働くだろうか。

むしろ、危機的状況は与党優勢の流れに拍車をかける可能性さえあるだろう。アベノミクスの継続を訴え続ける安倍首相の演説姿をテレビで眺めつつ、「科学的世論調査の父」ジョージ・ギャラップが米大統領の人気について語った言葉を思い出した。

「人気が急落するのは、たぶん、大事件に直面しているのに大統領が何もしないときだと言ってよいでしょう。何もしないというのが一番いけないんです。何をしたっていいんです。間違っていたとしてもね。それで人気がなくなることはありません。

……人々が評価するのは、大統領が何をしようとしているか、つまり目標です。何を成し遂げたか、どれほど成功したかが問われることは必ずしもないのです。

かつて、誰もが私たちにローズヴェルトの誤りをあれこれくり返し並べたてたものでした。それでも、こう続けるのです。『でも、私は彼を全面的に支持します。だって心意気は買えますよ。前向きですから。』」(Opinion Polls, 1962.)

この「心意気」こそ、アベノミクスの売りなのである。景気を良くする「前向き」なイメージを多くの有権者が評価するのであり、具体的な数字や政策の詳細を聞きたいと思う者などテレビの前にはいない。だとすれば、これを争点にした段階で選挙の勝敗は見えていたということになる。

結局、選挙戦で大切なのは「勝利のイメージ」である。そして、今回の参議院選挙で野党の宣伝ポスターに欠けているのがまさにこのイメージだ。その典型が民進党の「まず、2/3をとらせないこと。」である。

「2/3をとらせない」というスローガンで人々の脳裏に浮かぶのは、55年体制下の社会党である。かの1/3政党が戦後政治の「ブレーキ」として果たした歴史的な役割は別に評価できるとしても、そのイメージはいかにも後ろ向きというべきだろう。