中国巨大市場でシェア4割! “自転車”産業で成功した日系企業、その驚くべき「先行戦略」

利益と文化を創出した台湾メーカーにも注目
駒形 哲哉 プロフィール

サイクリング文化の大衆化を推進

ジャイアント社の経営の特筆すべき点は、生産技術や販売戦略で業界のリーディングカンパニーになったことに留まらない。台湾の自転車産業は主に海外市場を対象に発展したが、一方で台湾の道路はオートバイや自動車で埋め尽くされていた。

そこでジャイアント社は1989年に自転車文化形成を目的とする財団を設立し、2000年代以降、本格的に台湾の自転車ユーザーを掘り起こし、自転車普及の文化活動を展開している。この活動は企業の営利活動の域を超え、台湾における自転車利用環境の整備にもつながっている。

欧米の自転車市場は、すそ野(低価格品)から頂点の高級品(競技用)までが連続的な形状をもつ。

ところが、日本の市場は長きにわたって、実用用途で低価格指向の市場が主体で、競技用はそれと分断された形で主に競輪とつながる構造を有してきた。

そして日本国内の完成車メーカーの多くは、一時マウンテンバイクなどのブームもあったが、専ら「春需」と言われる新入学シーズンを中心とする実用用途の需要にターゲットを絞ってきた。

しかし2000年代後半から、大人がスポーツタイプに乗る姿を街中でしばしば見かけるようになり、近年では『弱虫ペダル』のヒットで競技用自転車のユーザーが拡大している。

さらに瀬戸内を一望する「しまなみ海道」が「サイクリストの聖地」と称されるようになって、市場の構造が少しずつだが変わってきている。

こうした日本国内の変化を企業サイドから先導してきたのは、「春需」死守の日本国内メーカーではなく、実はジャイアント社だった。

例えば「しまなみ海道」の成功は、自治体首長の努力もあるが、ジャイアント社の尽力によるところが大きい。同社は1989年に日本法人を設立してから1996年まで毎年1億円の赤字を出しながら、スポーツタイプの大衆市場を切り開いてきた。

そして台湾での成果をふまえ、日本でも自転車の普及と文化創造の活動を展開している。もちろん日本の自転車関連企業が何もしていないわけではない。

しかし、日本におけるサイクリング文化の大衆化を企業側から推し進める面で、ジャイアント社の貢献は大きい。