中国巨大市場でシェア4割! “自転車”産業で成功した日系企業、その驚くべき「先行戦略」

利益と文化を創出した台湾メーカーにも注目
駒形 哲哉 プロフィール

中国巨大市場のシェア4割を獲得

さらに2000年代前半から、無免許で乗れる電動スクーターが中国で劇的に普及し、中国の自転車メーカーが電動スクーターの生産にも参入していった。

同社の中国拠点がこれに対応して電動スクーター専用「サーボブレーキ」を開発したところ、その品質が評価され、中国の電動スクーター向けブレーキの4割のシェアを握るに至った。

年間3000万台前後の生産、保有台数2億台という巨大な電動スクーター市場のブレーキの4割のシェアを日系中小製造業が取っているのだ。

さらに世界の工場となっている中国において自転車・電動スクーター用ブレーキで「唐沢」ブランドが認知された結果、ブレーキレバー、充電器、ミニサッカーゴールなど今まで手掛けてこなかった製品のリクエストが「唐沢の品質管理能力ならできるだろう」ということで中国拠点に舞い込んできている。このほか日本の本社との連携で福祉関連製品として住宅浴室の椅子も生産している。

特筆すべきことは、中国拠点は設立以来、日本人が常駐せず、信頼できる人材を得て、経営の現地化が極限まで進んでいることだ。

唐沢製作所の成功は、電動スクーター市場の急拡大という中国固有の僥倖にめぐりあった偶然的要素がなかったとはいえない。

しかし、同社は、バンドブレーキの国内完成車向け供給で経営が安泰だった時期から輸出を模索し、中国など気候条件が日本と近く、かつての日本の自転車普及期と類似した路面条件をもつ新興国市場で「唐沢」ブランドを広めることを常に意識してきた。

また、バンドブレーキ需要が旺盛な段階で、ブレーキの音鳴りを解決する探究やブレーキ以外の模索が絶えず行われた。

このように国内市場、単一製品で経営が成り立っていた段階から、視界を広げ探究を続けてきたことが、業界内で先行して中国進出し、さらに偶然を引き寄せることにつながったと考えられる。

上記の唐沢製作所の事例は、資源制約のある中小企業が業界の大きな構造変化の流れ、中国経済の環境変化の流れに対応して成功する姿を示したものといえよう。