オバマ大統領の退任が世界にもたらす地殻変動~米国の「リバランス」政策はどこへ向かうのか

佐藤 丙午 プロフィール
〔PHOTO〕gettyimages

地政学的な地殻変動が起こる可能性

完全ではないものの、オバマ政権の8年間を通じて、「リバランス」の下での新たな安全保障態勢が緩やかに出現していった。同盟国や友好国は、この態勢変革に順応する必要に迫られたが、同時にそれはそれぞれの国においても困難な政治過程を経ることになる。

2015年の日本の平和安全保障法制をめぐる議論や、韓国における日韓関係の改善に向けた一連の政治過程も、その一つといえるであろう。もちろん、同盟国や友好国は「連邦化された防衛」の構築に協力しないという選択肢もあった。

しかし、その選択肢の代わりに存在するのは、米国の個別の関与ではなく、アジアの多国間協力体制からの孤立を意味するため、優位な選択肢とはならない。そして、政権の8年間は、関係国がこの過程を反芻するものであったのである。

「リバランス」は完成したものではない。しかし、国際社会の流れは、大きく変化しつつある。特に、英国の「Brexit」の国民投票の結果、ユーラシア大陸全体を巻き込む地政学的な地殻変動が起こる可能性がある。

また、2016年の大統領選挙の結果、継続されてきた米国の外交・安全保障政策の基本方針が大きく転換する可能性もある。

その中で「リバランス」がどのような方向に向かうのか、注目していく必要があるのである。

佐藤丙午(さとう・へいご)
拓殖大学国際学部教授。1966年、岡山県生まれ。博士(法学/一橋大学)。防衛庁防衛研究所主任研究官、拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。この間、経済産業省産業構造審議会貿易経済協力分科会安全保障貿易管理小委員会委員、外務省参与等も務める。国際安全保障学会理事、日本安全保障貿易学会会長、一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員。専門は国際関係論、安全保障、アメリカ政治外交、軍備管理。共著に『日米同盟とは何か』(中央公論新社)、『21世紀の国際関係入門』(ミネルヴァ書房)。