がん治療が激変!? 夢のゲノム編集技術「クリスパー」、いきなり医療の本丸へ

すでに15人の患者が了承済み
小林 雅一 プロフィール

今回、ペンシルベニア大学チームがやろうとしているのは、「CAR-T(Chimeric Antigen Receptor –T-cell:キメラ抗原受容体T細胞)」療法と呼ばれる最先端の免疫療法と、クリスパーを組み合わせた治療法だ。

一般にCAR-T療法では、免疫系に属するリンパ球の一種である「T細胞」を最適化することによって癌に立ち向かう。

特に今回は、癌患者の体内から取り出したT細胞をクリスパーでゲノム編集し、「PD-1」と呼ばれる特殊な分子の受容体遺伝子を破壊する。PD-1は京都大学名誉教授の本庶佑氏らの研究によって、その仕組みが解明されたもので、これがT細胞に結合すると、その免疫機能を失わせてしまう。

そこでPD1と結合する受容体の遺伝子をクリスパーで破壊してしまえば、PD1はT細胞に結合できなくなるので、その免疫機能は維持できるというわけだ。このように加工されたT細胞を患者の体内に戻すことによって、各種の癌を治療するばかりか、その再発も防げるようになるとペンシルべニア大学の研究チームは見ている。

今回、臨床研究の対象となるのは、癌の中でも「骨髄腫」「黒色腫」「肉腫」などに侵された15人の患者。彼らの了承は既に得ているため、今後、FDAの認可が下りれば、すぐにでも臨床研究が開始されると見込みだ。

CAR-Tの要素技術を開発したのは誰か?

ただ周囲の医療関係者の間では懸念も囁かれている。一つは利益相反の問題だ。

冒頭のSTAT記事によれば、ペンシルベニア大学の研究チームを率いるカール・ジュン博士は「CAR-T療法の発明者の一人」として知られ、この技術に関する特許を何本も持っている。またCAR-T療法の商用化を図るスイスの大手製薬メーカー「ノバルティス」と金銭的な関係もあるという。

要するに、STAT記事が暗に言おうとしていることは、ジュン博士が経済的な理由からCAR-T療法の実用化を急いでいるかもしれない、ということだろう。あまり迂闊なことは言えないが、これによって誰が害を被る恐れがあるかは、改めて言うまでもないことだ。

編集部からのお知らせ!

関連記事