憲法学者・木村草太が各党の「改憲」マニフェストを読む〜いま最も危惧すべきポイントは?

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木村 草太 プロフィール

自民党:具体的な記述ナシの謎

最後に自民党。

マニフェストの最後に、「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」という現行憲法の基本原理を堅持するとした上で、「国民の合意形成に努め、憲法改正を目指します」と述べるだけで、具体的な内容は書かれていない。

一つ注目されるのは、「参議院選挙制度改革」の項目で、「都道府県から少なくとも一人が選出されることを前提として、憲法改正を含めそのあり方を検討します」としている点である。一見すると、自分たちに有利な選挙区を存続させようとしているだけのようにも見える。一票の格差の是正を求めてきた人々からすれば、許しがたい提案だろう。

しかし、この提案については、少し落ち着いて考えてみる必要がある。

最近の最高裁は、一票の格差が2倍を超えると違憲状態と判断する傾向がある。現在の定数を前提にするならば、参議院議員選挙の格差を2倍以内に抑えるには、半分近い都道府県を合区・ブロック選挙区にまとめなくてはならないと言われる。合区が嫌ならば、議員定数を増やして都市部に割り振るしかないが、定数増は経費削減の流れに反するとして、議論されることはほとんどない。

都道府県の境界を無視した選挙をすれば、地域の特殊事情に関する情報が国会に届きにくくなってしまわないだろうか。

今回の選挙では、島根・鳥取、高知・徳島の四県を二つの合区にまとめた。これが良いことだったか、現地の人の声を丁寧に聞いてみることが必要である。

こう考えてみると、自民党の提案は、自分たちに有利な選挙区の延命というエゴ的主張だと馬鹿にできるものではない。落ち着いて検討してみるべきだろう。

このように、選挙公約のレベルで検討する限りは、「改憲勢力」の憲法改正提案は、どれもそれほど無茶なものではないように見える。

しかし、「これらの政党が衆参で3分の2の勢力を占めた場合に、不合理な改憲提案がなされる不安がないか」というと、そうでもない。