憲法学者・木村草太が各党の「改憲」マニフェストを読む〜いま最も危惧すべきポイントは?

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木村 草太 プロフィール

まず、①教育無償化は、現行憲法で禁じられているわけではない。国会が自ら法律を制定すれば実現できる問題だ。

法律の制定ならば、国会の2分の1の賛成でできる。本気でこの政策の実現を願うのならば、あえて憲法改正(国会の3分の2の賛成と、国民投票が必要)という茨の道を選ぶ意図が全く分からない。

次に、②道州制の項目を検討してみよう。おおさか維新の会は、市区町村といった基礎的自治体を自治の主な担い手と位置づけ、基礎的自治体ではカバーできない部分を道や州あるいは国が担うという「補完性の原則」を明文化すべきだとしている。

さらに、自治体の組織・運営に関する事項を自治体条例で決定できるようにした上で、法定事項について法律に優位する条例の制定を認めるという。

ここまで地方自治を一気に強化することが現実的であるか否かはおいておくとして、これらも地方自治法を改正し、自治体の組織・運営に関する事項や法律と異なる条例を認める事項を書き込めば実現できるだろう。現在の憲法には、都道府県制度の維持を義務付ける条文はなく、「地方自治の本旨」に基づく制度を設計するように求めているだけだからだ。

最後に、③「政治、行政による恣意的憲法解釈を許さない」ための憲法裁判所の設置。これは、昨年の安保法制の合憲性に関する不毛な議論を繰り返さないためと言われる。重要な法案について違憲の疑いがある場合に、法律の運用を待たずにその適法性の判断を裁判所ができるようにすべきではないか、という話は私も度々聞く。

憲法裁判所が機能するためには、裁判所人事に対する政治介入をいかに防ぐのか、あるいは、裁判所頼みになり国民的な議論を妨げるのではないかなど、非常に難しい問題もあり、私自身は慎重な立場をとっている。しかし、そうしたいくつかの深刻な問題をクリアできるのであれば、十分に検討に値するだろう。

ただこれも、法律で、政治・行政の恣意的憲法解釈を裁判所で争うための特別の訴訟形態を作ればよいのではないか。地方自治法が定める住民訴訟では、法律上の争訟性が必要とされない客観訴訟の制度がすでに取られており、制度整備は十分に可能だろう。

つまり、おおさか維新の提案のかなりの部分は、憲法を改正しなくても実現できるもののように思われる。

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