イギリスEU離脱の世界史的インパクト〜私たちが受け取るべき「2つの重大警告」

歴史はまた繰り返すのか?
笠原 敏彦 プロフィール

「世界で最も複雑な離婚劇」は始まったばかり

EUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)はこう語っている。

“完全な統合を急ぐという観念に取り憑かれ、我々は庶民、EU市民が我々と(統合への)情熱を共有していないということに気付かなかった”

EU首脳がここまで率直に反省の弁を述べたのは初めてだろう。

イギリス人は本来、保守的な国民である。急激な改革ではなく、漸進的な進歩を求めてきた人たちだ。それだけに、多くの予測に反してEU離脱という過激な結果が示されたことは、一層衝撃的なのである。

〔photo〕gettyimages

その結果が意味することは、「エリート主義の敗北」である。アメリカ大統領選であれよあれよという間に共和党候補となったドナルド・トランプ氏をめぐる「トランプ現象」、大陸欧州で勢いを増すポピュリスト政党の台頭と合わせ、その潮流は不気味である。

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イギリスのEUからの離脱という「世界で最も複雑な離婚劇」(フィナンシャル・タイムズ紙)は始まったばかりだ。

1973年に加盟したイギリスが欧州と43年間にわたって積み上げてきた無数のブロックのひとつひとつを、いかに全体を崩壊させずに引き抜き、両者の間にどのような新たな橋を築いていくのか。

イギリスでは「ブリクジット省」の創設が必要になるのではないかと指摘されるほど煩雑で、未知の領域に入っていくプロセスである。この離婚劇は、世界にとっても、経済面は言うに及ばず、国際政治の面においても極めて高くつくものとなるだろう。

笠原敏彦 (かさはら・としひこ)
1959年福井市生まれ。東京外国語大学卒業。1985年毎日新聞社入社。京都支局、大阪本社特別報道部などを経て外信部へ。ロンドン特派員 (1997~2002年)として欧州情勢のほか、アフガニスタン戦争やユーゴ紛争などを長期取材。ワシントン特派員(2005~2008年)としてホワイ トハウス、国務省を担当し、ブッシュ大統領(当時)外遊に同行して20ヵ国を訪問。2009~2012年欧州総局長。滞英8年。現在、編集委員・紙面審査 委員。著書に『ふしぎなイギリス』がある。