イギリスEU離脱の世界史的インパクト〜私たちが受け取るべき「2つの重大警告」

歴史はまた繰り返すのか?
笠原 敏彦 プロフィール

二度の大戦を引き起こしたドイツを「押さえ込む」ことが目的だったはずのEUは、その存在意義がパラドックス化する。ショイブレ財務相は独誌シュピーゲル(6月10日)のインタビューでドイツの苦悩を次のように語っている。

“人々はいつもドイツにリーダーシップを求める。しかし、ドイツが指導力を行使した途端に我々は批判されるのである。EUはイギリスがいることによってバランスがとれていた。イギリスが関与すればするほど、欧州はうまく機能してきた”

欧州の「ドイツ恐怖症」は消えていない。歴史を振り返れば、19世紀後半の「栄光ある孤立」などイギリスが欧州と距離を置くとき、大陸欧州は不安定化してきた。

「歴史の教訓は、イギリスの孤立主義はしばしば、欧州大陸の分裂と結びついてきたということである」

ニーアル・ファーガソン米ハーバード大教授はこう指摘している。

記者会見で悲壮感を漂わせていたメルケル首相の心中はいかほどだったか。ドイツの歴史に誠実に向き合いながら、欧州のリーダーシップを取らざるを得ないというジレンマ。その心中、察して余りあった。

イギリスは、欧州統合プロジェクトの初の脱落国家となった。離脱は、世界がかつて理想として仰ぎ見たヨーロピアン・ドリームを終焉させるだけでなく、EUが背負った「歴史の清算」という至高の目標すら台無しにしかねないのである。

2つの大きな警告

前回のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48954)で、イギリスでは国民投票を行う法的義務はなく、キャメロン首相の判断(勝てるという誤算)により今回の国民投票は実施された、と説明した。自らが信じる「国益」「国際益」をリーダーシップで守る努力を放棄したキャメロン首相に対する歴史の評価は、極めて厳しいものとなるだろう。

それでは、イギリスの国民投票が歴史に刻んだ教訓、警告とは何であろうか。国民投票に至るプロセスとその結果を振り返るとき、イギリスの経験は世界に2つの大きな警告を発しているように思う。

以下、順に説明したい。