モハメド・アリvsアントニオ猪木 40年目の「ある真実」

猪木戦より先に浮上した、幻の構想とは
細田 マサシ

最初にあがったアリの相手

しかし、今も昔も、日本人で世界ランキングに列なるヘビー級ボクサーはいない。となるとノンタイトル戦を行うしかないのだが、すでにアリは、72年にマック・フォスターとノンタイトル戦を東京で行っていた。

「あの試合はTBSが流したんだ。緊張感のないどっちらけの試合でなあ。それを今度はウチが流しても仕方ない」

また、日本人に限らず、世界ランカーを呼んで、アリの世界戦を行うことも頭をよぎったが、それも気が進まなかった。なぜなら、73年9月に日本武道館で行った、世界王者、ジョージ・フォアマンと挑戦者ジョー・キング・ローマンの世界戦を、NETは生中継していたからだ。新鮮味に欠ける気がした。

そんなとき、永里の脳裏に、一枚の写真の残像が蘇った。

4年前のマック・フォスター戦で来日したアリの歓迎レセプションパーティの席上に居合わせた大相撲力士の高見山大五郎が、アリにおどけてパンチを打つ写真である。オーバーアクションで応えるアリ。その光景に列席した誰もが沸き、誰もが興味深く眺めた。

「(フォスター戦で日本に行く際には)スモウレスラーのタカミヤマと会いたい」
というのは、アリのリクエストだった。

「これだ!」
永里は閃いた。というのも、『ワールドプロレスリング』と『エキサイトボクシング』のプロデューサーであった永里高平は『大相撲ダイジェスト』の生みの親にしてプロデューサーでもあったのだ。

「アリと高見山を戦わせよう!」

≪文中敬称略、後編に続く

細田マサシ 放送作家。71年生まれ、鳥取県出身。CS放送『サムライTV』でキャスターをつとめたのち放送作家に転身。担当番組は『5時に夢中!』(東京MX)。主な著書に『坂本龍馬はいなかった』(彩図社刊)。現在メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』で『格闘技を創った男~プロモーター野口修評伝~』を連載中