
……ここまでの話を聞いて、気づいたことはありませんか?
勘のいい人ならこう思ったはずです。
「そんなの、ぜんぶスマホでできるじゃん!」
そう。音楽を聴くこと、最新情報を仕入れること、本やマンガを読むこと、ゲームで遊ぶこと、時間を知り、写真を眺め、わからない単語を調べること。これらすべてが、いまではスマホ1台でこなせるようになりました。
もちろんスマホがあれば電話もできるし、LINEやツイッターで友だちと連絡をとり合うことも、写真や動画を撮影することもできます。わざわざ誰かの「部屋」に集まらなくても、みんなが「スマホのなか」に集まっている。中高生時代のお父さんやお母さんにスマホを見せたらどれだけ驚くでしょう?
みなさんが学校でなにを学んでいるか、なぜ学校に通っているか、なんとなくわかってきましたか?
いま、みなさんがあたりまえに暮らしている21世紀は「魔法の国」だということ。
そしてみなさんは、学校という場所で「魔法の基礎」を学んでいること。
どんな大発見や大発明も、すべては学校で学ぶ知識をベースに成し遂げられてきました。国語、数学、理科、社会、そして英語。これらはすべて、みなさんがあたらしい未来をつくっていくための「魔法の基礎」なのです。
勉強の目的は、いい高校や大学に合格することでも、いい会社に就職することでもありません。もっと大きな、もっと輝かしい未来をつくるために、勉強しているのです。
学校は、未来と希望の工場である。そんなふうにいってもいいでしょう。
世界を変えた数学者、ニュートン
「数学の方程式なんか勉強しても、社会に出てから使わないでしょ?」
中学生のみなさんがよく口にする言葉です。そして大人たちの多くもまた、この問いに正面から反論することはできません。実際のところ、会社で働きながら方程式を使うような場面なんてないからです。
では、数学はほんとうに役立たずの学問なのか?
理科や社会も、勉強しなくていいのか?
そんなことはありません。ここでひとり、人類の歴史を変えた数学者を紹介しましょう。
その人の名は、アイザック・ニュートン。

みなさんも名前は知っていますよね? たぶん「木から落ちるリンゴを見て、万有引力の法則を発見した」といったエピソードも聞いたことがあると思います。
でも、地球に引力があること(物体を引き寄せるような力が働いていること)くらい、ニュートンの時代の人たちはみんな知っていました。ニュートンは、引力そのものを発見したわけではありません。
それでは、ニュートンはなにを発見したのか?
数学です。もう少し詳しくいうと、ニュートンは微積分(微分と積分)学という「あたらしい数学」を発見したのです。微積分の詳しい中身については、みなさんも高校や大学に進んでから学ぶはず。とりあえず今日のところは、「そういうジャンルの数学がある」ということだけ覚えておいてください。
20世紀を代表する物理学者・アインシュタインは、ニュートンのことをこんなふうに評価しています。
「ニュートンにとっての自然とは、開かれた本であり、彼はそこに記された文字を苦もなく読むことができた」
木からリンゴが落ちること。地球は太陽のまわりを回っていること。その地球のまわりを月が回っていること。こうした自然界のありとあらゆる現象を、まるで一冊の本を読むように苦もなく読み解いていく。
なぜそんなことができたのか?
まだ誰も知らない、「あたらしい数学」を発見したからです。この数学を使えば、自然界の現象をどんどん説明していくことができる。ニュートンにとっての微積分学は、「あたらしい数学」というよりも、「世界を説明するためのあたらしい言葉」といったほうが的確なのかもしれません。