「なんで勉強しなきゃいけないの?」と子供に聞かれたら、こう答えよ

瀧本 哲史

魔法はどこから生まれるか

いきなり「魔法」と言われても、なんのことだかよくわかりませんよね。

むしろ学校の勉強なんて、ハリー・ポッターの映画とはまったく逆の、退屈でつまらないことばかりでしょう。

辞書で「魔法」の欄を引いてみると、「魔力をはたらかせて不思議なことを行う術。魔術。妖術」(広辞苑・第六版)と説明されています。そして実際、ハリー・ポッターやおとぎ話の魔法使いたちは、ほうきに乗って空を飛んだり、かぼちゃを馬車に変えてみせたり、「不思議なこと」をたくさんやってのけます。

でも、飛行機なんてもっと「不思議なこと」だと思いませんか?

日本とアメリカを結ぶ大型旅客機の重量は、150トン以上です。そんな鉄のカタマリが空を飛ぶなんて、どう考えても「不思議なこと」ですよね?

かぼちゃの馬車にしても、自動車のほうが何倍もすごいミラクルです。

馬が引っぱっているわけでもないのに、鉄のカタマリに油(ガソリン)が積んであるだけなのに、馬よりもずっと速く走る。しかも鉄は、石(鉄鉱石)からつくられている。要するに自動車って、石と油で走っているんですよ?

 

たとえば、江戸時代の人を想像してみてください。

もしもちょんまげ姿のお侍さんがいまの日本にタイムスリップしたら、どうなるのか? 江戸時代の人から見て、いまの日本はどんな世界に映るのか?

馬の代わりに鉄のカタマリが走り回り、夜になっても煌々と明かりが灯り、テレビと呼ばれる薄っぺらい箱の向こうには異世界が広がっている。そして人々はスマホという小さな板で、遠く離れた人たちとおしゃべりしている。雲の上には人を乗せた鉄の鳥が飛んでいて、地面の奥深くにも地下鉄とかいう鉄の大箱が走っている。

きっと彼は、恐ろしい「妖術の国」に来てしまった、と腰を抜かすでしょう。

江戸時代の人たちにとって、みなさんは天狗や河童レベルの「バケモノ」なのです。

でも、みなさんは自分がバケモノでないことを知っています。飛行機をつくったのはライト兄弟であること。電球をつくったのはエジソンであること。その他さまざまな「魔法」が、人間の手によって実現したことを知っています。妖術や魔術ではなく、ごくふつうの人間たちが長年にわたって積み重ねてきた「技術」の力なのだと知っています。

あるいはもっと身近なところで、みなさんのお父さんやお母さんが若かったころと比べてみてもいいでしょう。数十年前の中高生は、どんな部屋で、どんなものに囲まれながら青春時代を過ごしていたのでしょうか。

いまから数十年前、たいていの中高生は「ミニコンポ」と呼ばれるオーディオセットをもっていました。ミニコンポとは、CDやレコードのプレーヤー、カセットデッキ、ラジオなどが組み合わされたオーディオセットのこと。みなさんのお父さんやお母さんは、これを使って自分の好きな音楽を聴いていたわけです。

自分の部屋にテレビがある中高生はまだまだ少なく、情報源はもっぱら雑誌とラジオでした。好きなアイドルやお笑い芸人、ミュージシャンなどの情報を、雑誌やラジオから仕入れていたわけです。インターネットのない時代ですから、当然でしょう。

そうなると、部屋の本棚にはたくさんの雑誌が並んでいます。アイドル雑誌、音楽雑誌、ファッション雑誌、ゲーム雑誌、スポーツの雑誌、ありとあらゆる雑誌です。もちろんマンガも大好きなので、マンガや小説などもたくさんもっていたでしょう。

それからゲーム。初代のファミコンが任天堂から発売されたのが1983年です。お父さんやお母さんの部屋にも、ゲーム機が置いてあったかもしれません。また、友だちが遊びに来たときには、トランプや将棋、ボードゲームなどで遊ぶことも一般的でした。

部屋のインテリアとしては、壁のどこかに時計がかかっていて、自分の好きなアイドルやスポーツ選手のポスターを飾っている中高生も多かったでしょう。

そして机の上には、国語辞典と英和辞典、和英辞典などの辞書が並んでいます。勉強しながらわからない言葉や英単語に出会ったら、辞書を引いて調べるわけです。