なぜテレビに登場する訪日外国人は、欧米人ばかりなのか?

「気持ちのいい物語」づくりに走る、メディアへの違和感
岡本 亮輔 プロフィール

日本が選ばれる理由は「安・近・短」

千本鳥居と逆の例として伊勢神宮がある。神道の最高聖地と言ってよい。トリップアドバイザーでの評価が特段低いわけではないが、外国人観光者からの不満の声もある。

まず、大阪や名古屋から2時間以上かかり、交通の便が良くない。そして20年に1度、社を建て替える「式年遷宮」という伝統行事がある。式年遷宮は、日本人に対しては、集客効果の高い一大イベントだ。

しかし、外国人から見ると、式年遷宮があるため伊勢神宮の社はいつ見ても新しい。さらに建築様式は唯一神明造りという簡素なものだ。この様式は伊勢神宮だけに許される貴重なものだが、そうしたことを知らない外国人観光者には、物足りなく映ってしまう。東京や京都には、古くて大規模な神社がいくらでもあり、伊勢神宮は遠いわりには写真的な面白さに欠けるのだ。

今年3月、政府主導の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は、2020年の訪日外国人観光客数の目標を2000万人から4000万人に倍増させた。当然の上方修正だろう。このペースでいけば、4000万人もおそらく達成する。

しかし、その時、やって来る人たちは移動の楽さと撮れる写真の面白さで目的地を選ぶ。日本の文化や社会にとりわけ強い関心があるわけではないし、お金や時間にもっと余裕があれば、本当はヨーロッパに行きたかったのかもしれない。

実際には「安・近・短」という理由で日本が選ばれているのだが、何か日本の文化や社会そのものに外国人が興味を抱いているという「都合の良い誤解」がないだろうか。そうだとしたら、ゲストにとっては鬱陶しい状況であるし、政府のお題目の国際理解や異文化理解とは真逆の傾向だ。

自分たちを好きなことが分かっている人とだけつき合うのは生暖かく心地良い。しかし、観光立国とは、自分たちのことを好きでも嫌いでもない人たちとつき合えるようになることなのかもしれない。

岡本亮輔(おかもと・りょうすけ)
北海道大学大学院観光創造専攻・准教授。専攻は宗教学と観光社会学。1979年東京生まれ。立命館大学文学部卒。筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(文学)。著書に『聖地と祈りの宗教社会学――巡礼ツーリズムが生み出す共同性』(春風社、2012)、『聖地巡礼――世界遺産からアニメの舞台まで』(中公新書、2015)。共編著に『聖地巡礼ツーリズム』(弘文堂、2012)、『宗教と社会のフロンティア』(勁草書房、2012)。共訳書に『宗教社会学―宗教と社会のダイナミックス』(明石書店、2008)。