なぜテレビに登場する訪日外国人は、欧米人ばかりなのか?

「気持ちのいい物語」づくりに走る、メディアへの違和感
岡本 亮輔 プロフィール

観光地は美しい写真を撮るための舞台装置

1位が伏見稲荷というのは興味深い。同社はもちろん有名神社で、日本人にも人気の観光地だ。しかし、金閣寺や厳島神社を押しのけるほどだろうか。京都には銀閣寺、龍安寺、等持院、南禅寺など、いくらでも寺社はあるが、これらはランクインすらしていない。

おそらく伏見稲荷が1位になったのは、ゴールデンルート上にあり、なおかつ朱色の千本鳥居という写真的な分かりやすさがあるためだ。

千本鳥居は日本人にとってはそれほど珍しくはない。わりと小さな稲荷社でも見かける。しかし、日本の宗教文化や歴史を知らない外国人観光者にとっては、千本鳥居は分かりやすく、写真に撮りたい対象だ。

外国人から見た千本鳥居のインパクトを示す例として、昨年末、CNNが発表した「日本の最も美しい場所31」がある。

選ばれた場所の多くは自然景観、文化景観で有名なところだが、その中に、山口県長門市の元乃隅稲成神社が入っている。地元の人以外はほとんど知らないだろう。

ちなみに、寺社は全部で6つ選ばれているが、他の5つは厳島神社、毛越寺、宇佐神宮、金閣寺、那智の滝という圧倒的に有名なものだ。

元乃隅稲成神社は、1955年、地元の網元の夢に白狐が顕れたのをきっかけに創設され、1987年以降、鳥居が寄贈されるようになった。波が打ち寄せる岩場に作られ、青と赤が対照的な景観はたしかに美しいが、神社としての歴史や伝統で言えば、他の5つには遠くおよばない。

しかし、訪日外国人から見れば、歴史や伝統はそれほど大切な要素ではない。むしろ信仰はあるわけがなく、宗教文化の知識もないからこそ、視覚的な美しさが重要になるのだ。

最近亡くなった観光社会学の泰斗ジョン・アーリは、観光体験における視覚の重要性に気づいた研究者の一人だ。ヨーナス・ラースンとの共著『観光のまなざし』では、「写真になりそうなところ」を探し求めるのが観光であり、観光地は美しい写真を撮るための舞台になりつつあることが論じられている。

こうした傾向は、スマートフォンやタブレットにカメラ機能が当然のように搭載され、さまざまな写真・動画のアプリケーションが利用できるようになったことで、さらに強まっている。SNSで「いいね」やリツイートを稼げるような写真を撮れる場所が良い観光地なのである。