なぜテレビに登場する訪日外国人は、欧米人ばかりなのか?

「気持ちのいい物語」づくりに走る、メディアへの違和感
岡本 亮輔 プロフィール

日本観光の定番ルート

さらに言えば、彼らが好きな浮世絵や茶道や宮本武蔵や中山道や奇祭は、実際のところ、多くの日本人にとって日常的なものではないだろう。それをあたかも日頃から親しんでいるかのようにふるまうのは上品さに欠ける。

大多数の現実の訪日外国人は、知日・親日でマニアックで一方的に日本に強く憧れているような人々ではない。そもそも彼らが旅先に日本を選ぶ動機には、たとえば地理的な近さとそれに由来する費用の安さなど、極めて現実的な要素が関係している。

訪日外国人の実際の観光行動を垣間見せてくれるデータとして、トリップアドバイザーが発表した「日本で最も人気のある観光地トップ30」が面白い。トリップアドバイザーは複数言語で運営される大規模な口コミサイトの一つだ。

2013年4月から2014年3月までの間に、日本語以外でかかれたレビューを独自のアルゴリズムで解析してランキング化したものだ。外国人観光者に人気のある場所を大まかに把握することができる。

1位 伏見稲荷
2位 広島平和記念資料館
3位 厳島神社
4位 金閣寺
5位 東大寺
6位 高野山奥の院
7位 清水寺
8位 新宿御苑
9位 彫刻の森美術館
10位 成田山新勝寺
11位 美ら海水族館
12位 松本城
13位 三十三間堂
14位 嵐山モンキーパークいわたやま
15位 兼六園
16位 ロボットレストラン
17位 二条城
18位 長崎原爆資料館
19位 森美術館
20位 明治神宮
21位 地獄谷野猿公苑
22位 奈良公園
23位 道頓堀
24位 渋谷センター街
25位 浅草寺
26位 海遊館
27位 スペースステーション(大阪)
28位 トヨタ産業技術記念館
29位 錦市場
30位 心斎橋

ほとんどは有名な場所であるが、そうでないものも混じっている。

ちなみに、27位のスペースステーションというのは、なんばにあるゲームをしながらお酒が飲めるバーだ。お客さんに日本人はほとんどいないらしい。

兼六園の上に嵐山モンキーパークいわたやまというのも感慨深い。京都には4年暮らしたが、初めて名前を聞いた。

このランキングは色々な解釈ができるが、基本的には、移動が楽で外国人から見て分かりやすく写真映えのする場所が好まれているのではないだろうか。

訪日外国人の観光を考える時、彼らの移動パターンを忘れてはならない。まずは「ゴールデンルート」だ。成田に到着後、東京、富士山、京都、奈良、大阪と回り、関空から帰国するという定番ルートだ(もちろん、この逆もある)。成田山新勝寺が10位と高順位につけ、箱根の彫刻の森美術館やトヨタ産業技術記念館がランクインしているのは、ゴールデンルート上にあるためだと言える。

そして最近、知られ始めているのが主に中部地方を縦断する「サムライルート」である。名古屋を出発して、高山、白川郷を経由して金沢へ至るもの、あるいは松本を出発して、平湯温泉、高山、白川郷、金沢というものもある。

ゴールデンルートに比べると、ややマニアックで穴場感があるパターンだ。二度目の日本観光でちょっとディープな観光をしたい人向けのものだ。松本城、兼六園などに加え、地獄谷野猿公苑などがランクインしているのはサムライルートの影響だろう。

いずれにしても、見たいものを見に行くというよりも、見に行きやすいものを見に行くのが実態だと言える。